208 / 584
二章
2ー89
しおりを挟むオークションかぁ~。
せっかく王都にいるんだから行って見るのもいいかなぁ~。
次の機会なんていつ訪れるかわからないし。
あ、でも今私の頭には猫耳がついてるんだった。猫耳どうしよう………。
「あの、この化粧水の効果ってどれだけ持続するかわかりますか?」
こういう時は鑑定士さんに確認するに限る。
きっと持続時間もわかるだろう。多分。
『んとぉ~残念なことにぃ~三日間になりますぅ~。一生~続けばいいのにねぇ~。』
「そうですか。三日間ですか………って三日!?」
私は猫耳を押さえて蹲る。
三日もこのままって………。
マコトさんに会うときは猫耳のままじゃん。
『短いですよねぇ~。』
「いや!長すぎるからっ!!三日間は長すぎるからっ!!」
鑑定士さんの言葉に思わず突っ込んでしまった。
『にゃっ!』
『三日で猫耳なくなっちゃうのぉ~。』
『マユの猫耳ぃ~。期限付きなんてプーちゃんのバカ。』
ありゃ。
私の足にまとわりついているマーニャたちからも残念そうな声が聞こえてくる。
って、さっきまでプーちゃん褒め称えてたのに期限付きってわかったらこの対応なんだね。
クーニャはプーちゃんのそばに移動すると猫パンチを繰り出している。
期限付きということが気に食わなかったらしい。
「オークション会場に行くの諦めます………。」
『あらぁ~。なんでぇ~?王都にぃ~いるんでしょ~?参加~しなさいよぉ~。』
あれ?
私、鑑定士さんに王都にいるっていったっけ?
「なんで私が王都にいるって知っているんですか?」
『どこのぉ~転送ボックスからぁ~転送されたかぁ~わかるようになっているのよぉ~。で、なんでぇ~?』
鑑定士さんの言葉に納得する。
そうか。どこから送られてきたのかわかるようになっているのか。
それもそうだよね。
品物を送り返す時、どこに送り返したらいいかわからなくなるしね。
普通に考えれば当たり前のことか。
「その化粧水飲んじゃったんです。」
『まぁ~~~!!!それはぁ~是非オークション会場にぃ~来てください~!!!』
「いや。恥ずかしいので無理ですっ!」
『恥ずかしくなんてぇ~ないですよぉ~。みんなのぉ~憧れのぉ~的ですぅ~。それにぃ~効果がぁ~実際にぃ~見えた方がぁ~化粧水のぉ~価格がぁ~高くなりますよぉ~。』
「ぐっ!」
確かにさ、こういう風になりますよっていうのを見せた方が化粧水の値段も高くなるだろう。
でも、でも。恥ずかしい。
この似合わない猫耳姿だし。
『『『マユ!行くの!!絶対行くの!!』』』
いつの間にかプーちゃんに猫パンチをかましていたクーニャも合流して、私の足をテシテシと前足で叩いてくる。
それから、じぃーっと私の目をそのまあるい瞳で見つめてくる。
キラキラとした瞳を見つめていると、嫌だとは言えなくなってくる。
………マーニャたちには勝てない。
「………………行きます。」
マーニャたちのおねだりに負けてしまった。
ガクッとバランスを崩し、その場に崩れ落ちる。
この格好を晒すのは嫌だけれども、それ以上にマーニャたちの期待を裏切ることができない。
そんな目で見つめられたら頷くしかないではないか。
『わかったわぁ~。明日ぁ~、宿までぇ~迎えにぃ~行きますねぇ~。もしぃ~可能であればぁ~化粧水もっとじゃんじゃん~作ってぇ~持ってきてぇ~くださいねぇ~。』
うぅ。
鑑定士さんの弾んだ声が恨めしい。
これ、きっと鑑定士さんも化粧水買おうとしているでしょ。
声がすごくウキウキしているもん。
しかも、通信いきなりぷっつり切れてるし。
でもまあ、せっかくオークション会場に行くのだし。
材料と時間があるだけ、化粧水作ろうかなぁ。
でももう17時だし。作成時間を考えると30本が限界みたい。
夜更かしはお肌に悪いしね。
「マーニャ。クーニャ。ボーニャ。化粧水いっぱい作るよ!」
『『『らじゃあ~!!!』』』
マーニャたちに声をかけると嬉しそうに返事をしてくれた。
これは、マーニャたちが手伝ってくれるのかな?
それから、私とプーちゃんは化粧水作りに明け暮れた。
と言っても材料入れて時間が経ったら取り出すだけだけれども。
あれほどはりきっていたマーニャたちは化粧水作りを結局は手伝ってくれず、プーちゃんが全て押し付けられていた。
マーニャたちは3匹で遊んでいたり寝ていたり自由気ままにすごしていた。
ちなみに、この日出来上がった化粧水は追加分が30本だった。
それぞれ効果が違うのか化粧水の味が異なっている。
コーンポタージュ味に納豆味、牛乳味だ。
コーンポタージュと牛乳はいいとして、納豆味。これ、売れるのだろうか。効果もよくわからないし。
でも、飲んでみる勇気もない。今度は猫の尻尾が生えました~なんてなったら目も当てられないし。
だから効果については明日鑑定士さんに確認してもらうことにした。
32
お気に入りに追加
2,571
あなたにおすすめの小説
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
異世界でお金を使わないといけません。
りんご飴
ファンタジー
石川 舞華、22歳。
事故で人生を終えたマイカは、地球リスペクトな神様にスカウトされて、異世界で生きるように言われる。
異世界でのマイカの役割は、50年前の転生者が溜め込んだ埋蔵金を、ジャンジャン使うことだった。
高級品に一切興味はないのに、突然、有り余るお金を手にいれちゃったよ。
ありがた迷惑な『強運』で、何度も命の危険を乗り越えます。
右も左も分からない異世界で、家やら、訳あり奴隷やらをどんどん購入。
旅行に行ったり、貴族に接触しちゃったり、チートなアイテムを手に入れたりしながら、異世界の経済や流通に足を突っ込みます。
のんびりほのぼの、時々危険な異世界事情を、ブルジョア満載な生活で、何とか楽しく生きていきます。
お金は稼ぐより使いたい。人の金ならなおさらジャンジャン使いたい。そんな作者の願望が込められたお話です。
しばらくは 月、木 更新でいこうと思います。
小説家になろうさんにもお邪魔しています。
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。
変わり者と呼ばれた貴族は、辺境で自由に生きていきます
染井トリノ
ファンタジー
書籍化に伴い改題いたしました。
といっても、ほとんど前と一緒ですが。
変わり者で、落ちこぼれ。
名門貴族グレーテル家の三男として生まれたウィルは、貴族でありながら魔法の才能がなかった。
それによって幼い頃に見限られ、本宅から離れた別荘で暮らしていた。
ウィルは世間では嫌われている亜人種に興味を持ち、奴隷となっていた亜人種の少女たちを屋敷のメイドとして雇っていた。
そのこともあまり快く思われておらず、周囲からは変わり者と呼ばれている。
そんなウィルも十八になり、貴族の慣わしで自分の領地をもらうことになったのだが……。
父親から送られた領地は、領民ゼロ、土地は枯れはて資源もなく、屋敷もボロボロという最悪の状況だった。
これはウィルが、荒れた領地で生きていく物語。
隠してきた力もフルに使って、エルフや獣人といった様々な種族と交流しながらのんびり過ごす。
8/26HOTラインキング1位達成!
同日ファンタジー&総合ランキング1位達成!
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】女神の使徒に選ばれた私の自由気ままな異世界旅行とのんびりスローライフ
あろえ
ファンタジー
鳥に乗って空を飛べるなんて、まるで夢みたい――。
菓子店で働く天宮胡桃(あまみやくるみ)は、父親が異世界に勇者召喚され、エルフと再婚したことを聞かされた。
まさか自分の父親に妄想癖があったなんて……と思っているのも束の間、突然、目の前に再婚者の女性と義妹が現れる。
そのエルフを象徴する尖った耳と転移魔法を見て、アニメや漫画が大好きな胡桃は、興奮が止まらない。
「私も異世界に行けるの?」
「……行きたいなら、別にいいけど」
「じゃあ、異世界にピクニックへ行こう!」
半ば強引に異世界に訪れた胡桃は、義妹の案内で王都を巡り、魔法使いの服を着たり、独特な食材に出会ったり、精霊鳥と遊んだりして、異世界旅行を満喫する。
そして、綺麗な花々が咲く湖の近くでお弁当を食べていたところ、小さな妖精が飛んできて――?
これは日本と異世界を行き来して、二つの世界で旅行とスローライフを満喫する胡桃の物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる