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二章

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私は大慌てで、鏡を見るために走った。

そして、鏡を見て愕然とする。

 

「………猫耳。」

 

そう、真っ黒な猫耳が頭に生えていたのだ。

つまんでみると、つままれた感触まで再現されている。

しかも、私の元々あった耳がご丁寧になくなっているのである。

それでも、周りの音が聞こえたということは、この猫耳が機能しているわけであり。

耳が動くかなと、動かそうとしてみればちゃんとに耳が動く。

この化粧水を飲んで出てきた耳、なんでこんなに高性能なのだろうか。

しかし、ほんとにちゃんとに元に戻るんだろうか、この耳は。

一生このままとか嫌だよ。

そりゃさ、可愛い女の子が猫耳だったら萌えるけどさ、私みたいなおばさんが猫耳でも誰も萌えないでしょ。っていうか、公害かもしんない。

猫耳は可愛い子がつけるから可愛いんだよ………。

って、こんな耳じゃ恥ずかしくて王都を歩けないよ。

ということで、必然的に猫耳が引っ込むまで王都の散策はお預けだ。

折角いろいろ見て回ろうと思っていたのになぁ。残念。

 

『マユお揃いなのー。』

 

『お揃いなのー。』

 

『嬉しいのー。』

 

マーニャたちは私の猫耳を見て嬉しそうに飛び跳ねている。

それから、私のそばに来てザラザラとした小さな舌で私の耳を丁寧に舐めてくる。

 

「くすぐったいよ、マーニャ、クーニャ、ボーニャ。」

 

そう言うとマーニャたちは舐めるのを辞めて、私の足にすりすりと頭をこすり付けてくる。

どうやらお揃いの耳というのが嬉しかったようだ。

プーちゃんが魔力を込めたら猫耳が生えたのだから、もしかしてユキさんにあげた化粧水の効果も猫耳が生えるというものだったのだろうか。

でも、それなら教えてくれてもいいものだけれども………。

しかも長年の夢だったとか。猫耳が長年の夢?にわかに信じられないけど。

まあ、ユキさんとっても可愛い人だったし。猫耳似合うだろうなぁ。

 

『たまにはプーちゃんもいい仕事するのー。』

 

『プーちゃん偉いのー。』

 

『ご褒美なのー。』

 

マーニャたちはとてもご機嫌のようで、長い尻尾をゆったりと左右に揺らしている。

よかったね。プーちゃん。

プーちゃんの仕事が認められたみたいだよ。

でも、この化粧水って売れるのだろうか。

マーニャたちは私に猫耳が生えたことを嬉しがっているが、正直とても私には似合っていないと思うので今後、飲むことはないだろう。

先ほどの魔道具やの女性店員さん(名前を聞くのを忘れた)の情報だと飲む化粧水を欲しがる人はいるらしい。まあ、猫耳がつくって付属効果は需要があるかわらからないけど、一度オークションに出してみようかな。

確か、この部屋にも転送ボックスがあったはず………。

転送ボックスを探すとすぐに見つかった。部屋の入り口のすぐ脇に置かれていたのだ。

さっそく、9本の化粧水を転送ボックスに入れる。

 

『はろぉ~。遅いわよぉ~。化粧水ないのかってぇ~問合せがぁ~殺到しているわよぉ~。口コミってぇ~恐ろしいわねぇ~。』

 

転送ボックスに化粧水を入れたらすぐに鑑定士さんからの念話が届いた。

どうやら、化粧水を待っていたようだ。

 

『そんでぇ~。今回のぉ~化粧水はぁ~鑑定するけどぉ~。これぇ~、やばくね?今回もぉ~オークションにぃ~なりますぅ~。』

 

「オークションにはなるかと思っていたけれど、やばいって?」

 

『うふっ。だってぇ~、みんなのぉ~憧れぇ~、猫耳よぉ~?今回はぁ~黒い~猫耳限定ぇ~みたいだけれどぉ~。これはぁ~殺到するわよぉ~。オークション~楽しみねぇ~。』

 

「あ。猫耳需要あるんですね。」

 

『もちろんよぉ~。明日ぁ~、オークションにぃ~出すわぁ~。今回はぁ~オークション会場にぃ~来るぅ~?』

 

 

 

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