上 下
205 / 584
二章

2ー86

しおりを挟む
 

猫と一緒に止まる部屋だからか、部屋の片隅にはところ狭しと猫用のおもちゃが置かれていた。

オーソドックスな猫じゃらしから、穴がポコポコ開いたダンボールや、何に使うのかわからない人形まで様々なおもちゃが用意されている。

これ、どれでも好きに使用していいそうだ。

ちなみに、どれも消毒済みなので猫に使用しても安心・安全である。

どれを使用しようかな・・・。

ここはまず、オーソドックスに猫じゃらしかな?

真っ白いふわふわな毛が先端についた猫じゃらしを手に取る。

 

「ほら~猫じゃらしだよ~。」

 

マーニャの前でゆらゆら揺らしてみるが、チラリとこちらを見るだけで反応が薄い。

 

「………………。」

 

マーニャが釣れない。

ゆらゆらゆらゆら。

猫じゃらしだけが遊んで欲しそうに揺れているが、マーニャは何処吹く風だ。

猫じゃらしって動かしていれば猫が寄ってくるんじゃなかったっけ?

気を取り直して、手のひらサイズのネズミの人形を手に取ってみる。

こちらもふわふわな真っ白い毛で覆われている。

さわり心地がとても良い。

これを、ボーニャの前に置いてみるが、反応がない。

チラリとネズミの人形を見たが、毛づくろいを初めてしまった。

 

「………………。」

 

仕方ない。

まだまだおもちゃはいろいろあるから別のおもちゃにしてみよう。

今度は魚の形をしたぬいぐるみ?を手にとってみる。

ぎゅっと握ると「カサッ」と音がする。

クーニャに向かって魚の形をしたぬいぐるみをふりふりしてみる。

が、やはり反応がいまいちだ。

魚のぬいぐるみをチラリと見るのだが、そのままベッドの上で丸くなって寝てしまった。

 

「………………。」

 

いったい、何のおもちゃで遊べばいいのだろうか。

途方にくれたところで、ピンポン玉くらいの穴が沢山開いたダンボールが目に入った。

はて?これはどうやって遊ぶおもちゃなのだろうか。

うーん。

ただ、ダンボールを見せるだけだと意味がないだろうし。

そこで、一番最初に手に取った猫じゃらしが目に入った。

ちょうど、ダンボールの沢山空いた穴から猫じゃらしが顔を出すことができる。

クーニャの前にダンボールと猫じゃらしを持っていって早速ダンボールの穴から猫じゃらしをひょこっと少しだけ出してみた。

すると、クーニャの目が猫じゃらしに釘付けになった。

これはいけるかもしれないっ!

私は猫じゃらしをひょっこりと出す穴を変えてみたりしてクーニャを誘う。

もぐらたたきのような遊び方だ。

クーニャはしばらく目だけで猫じゃらしを追っていたが、寝ていた体勢から起き上がった。

そうして、猫じゃらしからは目を離さずに、お尻を高く上げてお尻を左右に振り出した。

もちろん、尻尾はピーンッと張っている。

穴から猫じゃらしを出したり引っ込めたりしていると、クーニャの目がキラリと光った。

 

ペシッ!!

 

ついに、クーニャが猫じゃらしにじゃれついた!

やった!やったよ!

一回じゃれつくと癖になるのか、穴から出す位置を予測してペシペシと右手で叩き始めた。

もぐら叩きならぬ猫じゃらし叩きだ。

しばらく楽しそうにクーニャが遊んでいたが、10分も経つと疲れたのか猫じゃらしから目を背けてしまった。

 

「クーニャ、楽しかった?」

 

『楽しかったけど、疲れたから少し休むのー。』

 

やはり集中していただけに疲れたようだ。

今度は、マーニャと遊ぼうかな。

お魚のぬいぐるみで遊んでみたいんだけど、どうしたらいいんだろう。

と思って、おもちゃが置いてあったところをみると、なんとマタタビが置かれていた。

そこには「少量だけおもちゃにつけて遊んでください」と書かれている。

マタタビを一掴みとると、魚のぬいぐるみに振りかけてみた。

そうして、マーニャの傍に持っていくと、ボーっと窓から外を眺めていたマーニャが勢いよく振り向いた。

そして、クンクンとあちこち匂いを嗅いでいる。

 

「これ?」

 

マーニャの前にマタタビを振りかけた魚のぬいぐるみを差し出す。

すると、「にゃあ♪」と鳴きながら魚のぬいぐるみに頭をこすり付けてきた。

何度か頭をこすり付けた後、おもむろに魚のぬいぐるみに噛み付いた。

両手両足で魚のぬいぐるみをホールドすると勢いよく両足で魚のぬいぐるみを蹴り始めた。

ちょうど猫がホールドするサイズに丁度いい魚のぬいぐるみである。

きっとこの遊び方が適切なんだろう。

だけれども、なんかマーニャが一匹で遊んでいるだけで、私は蚊帳の外だ。

マーニャが楽しそうなのはいいけど、ちょっと寂しい。

今度はボーニャと遊ぼう。

手のひらサイズのネズミのぬいぐるみを手に取る。

先ほど、クーニャはダンボールの穴からひょこひょこ顔を出す猫じゃらしに夢中だった。

獲物が見え隠れするのがいいのかもしれない。

そう考え、ネズミのぬいぐるみと、近くにあった少し厚めの生地の布を手に取る。

この布もおもちゃとして用意されていた。

 

「ボーニャおいで・・・。」

 

私はその布の下に手をいれて、ネズミのぬいぐるみを布から出したり引っ込めたりする。

すると、ボーニャが毛づくろいをやめてこちらを見た。

先ほどとは違い少し見ただけでまた毛づくろいを始めるのではなく、何時でもネズミのぬいぐるみに飛びかかれるような体勢をする。

どうやらボーニャはネズミのぬいぐるみが気になるようだ。

不規則に布からネズミのぬいぐるみを出し入れすると、狙いをつけて飛び掛ってきた。

そうして、ネズミのぬいぐるみを両手でパシッと捕まえると、高く放り投げる。

落ちてきたネズミのぬいぐるみをまた両手で捕まえると、また高く放り投げる。

捕まえては放り投げ。放り投げては捕まえるの繰り返しだ。

マーニャと同じくボーニャもまた一匹だけで遊び始めてしまった。

 

ま、いっか。

マーニャもクーニャもボーニャも楽しそうだし。

それより、そろそろ化粧水ができたかな?

いそいそと錬金釜の元へと向かう。

蓋を開けようと手を蓋にかけると、

 

『『『プーちゃんっ!!』』』

 

マーニャ達の声が響いた。

 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でお金を使わないといけません。

りんご飴
ファンタジー
石川 舞華、22歳。  事故で人生を終えたマイカは、地球リスペクトな神様にスカウトされて、異世界で生きるように言われる。  異世界でのマイカの役割は、50年前の転生者が溜め込んだ埋蔵金を、ジャンジャン使うことだった。  高級品に一切興味はないのに、突然、有り余るお金を手にいれちゃったよ。  ありがた迷惑な『強運』で、何度も命の危険を乗り越えます。  右も左も分からない異世界で、家やら、訳あり奴隷やらをどんどん購入。  旅行に行ったり、貴族に接触しちゃったり、チートなアイテムを手に入れたりしながら、異世界の経済や流通に足を突っ込みます。  のんびりほのぼの、時々危険な異世界事情を、ブルジョア満載な生活で、何とか楽しく生きていきます。 お金は稼ぐより使いたい。人の金ならなおさらジャンジャン使いたい。そんな作者の願望が込められたお話です。 しばらくは 月、木 更新でいこうと思います。 小説家になろうさんにもお邪魔しています。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

王女殿下は家出を計画中

ゆうゆう
ファンタジー
出来損ないと言われる第3王女様は家出して、自由を謳歌するために奮闘する 家出の計画を進めようとするうちに、過去に起きた様々な事の真実があきらかになったり、距離を置いていた家族との繋がりを再確認したりするうちに、自分の気持ちの変化にも気付いていく…

その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~

たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!! 猫刄 紅羽 年齢:18 性別:男 身長:146cm 容姿:幼女 声変わり:まだ 利き手:左 死因:神のミス 神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。 しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。 更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!? そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか... 的な感じです。

処理中です...