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二章
2ー82
しおりを挟む結論から言おう。
宿の値段は獣人の街の宿屋よりも高かった。
お値段なんと一泊7万ニャールドだった。
7万ニャールド掛ける5名分で一泊35万ニャールドが飛んでいく計算だ。
四泊もしたら手持ちのお金が全て飛んでいく。そう考えると、思わず遠い目をしたくなった。
って、ザックさんなんでこんな高級宿に泊まれるの!?
キャティーニャ村の雑貨屋さんのザックさんだよね?
もしかして、キャティーニャ村の雑貨屋さんってそんなに儲かるのだろうか。
「ザックさんは、どうしてこんなに高い宿に泊まれるんですか?」
「親戚なんだ。親戚価格で泊めさせてもらっている。ただ、宿泊中は宿の仕事も手伝わなければならないんだ。」
なるほど。
親戚ならば納得だ。しかも、宿の仕事を手伝うということは、宿泊料金はほぼただ同然なんだろう。
「ああ。心配するな。マユさんは手伝わなくていい。人手は足りてる。ただ、宿泊料は正規の値段になってしまうが・・・。」
「手伝いもしないのに宿泊料が安くなるとは思ってないから大丈夫です。」
「ああ。でも、猫様の宿泊料は無料だから安心するといい。」
「えっ?サービスですか?」
「いいや。猫様だからだ。」
猫だから宿泊料が無料ってことがよくわからないけど、マーニャたちの宿泊料がかからないのは助かった。
だって、合計21万ニャールドもするんだもの。
定職についていない私にはちょっと厳しい金額なのだ。
「王都のどの宿でも猫様は宿泊料がかからないの?」
「ああ。猫様だからな。」
すごい。
猫に対する優遇がすごいよ。
「ただ、食事代は取られるから注意しとけよ。」
「わかった。それくらいなら大丈夫。」
プーちゃんと私で一泊合計14万ニャールド。そのくらいなら、ユキさんがくれた化粧水の代金でなんとか賄える。王都に一週間泊まっても大丈夫だ。
少し安心。
案内された部屋はマーニャたちが一緒だからか宿の最上階の一室だった。ちなみにザックさんは従業員用の部屋に泊まるらしい。
従業員用の部屋へはお客様は入れられないということで、ザックさんに用事があるときは、宿の人を経由して声をかけることになった。
食事も別のようだ。
部屋のなかには、こじんまりとしてはいるがちゃんとにお風呂がついていた。また、お風呂の隣には猫様専用の小さなお風呂がついていた。
猫って基本的にお風呂に入るの嫌いだと思ったんだけど・・・。ついているんだね、お風呂。
まあ、汚れちゃった時とかはお風呂に入れないといけないしね。
トイレも人間用のトイレと猫様用のトイレが5つほど用意されていた。
猫様用のトイレはちゃんとに個室になっており、用を足している姿を周りから見られないような作りになっている。
また、中に入っている猫砂に関しても猫の安全に配慮された環境と猫に優しい木屑からつくられた猫砂になっているとか。
猫様にとって配慮されているようだ。
ベッドもちゃんとに猫様用のベッドが複数用意されていた。
お気に入りの場所で寝られるように、家具の隙間や家具の上など、様々なところにベッドが用意されている。
また、大きなキャットタワーが置かれており、壁にはキャットウォークまで用意されていた。
いたれりつくせりである。
部屋の説明を宿の従業員から受けて、ザックさんとはわかれた。
荷物は部屋に置いておいても良いとのことだったので、早速マコトさんのところに行こうと思う。
「マーニャたちはマコトさんのところに行ってみる?って、まだマコトさんがどこにいるのかわからないから場所を探すところからなんだけど・・・。」
『疲れたから寝るのー。』
『いってらっしゃーいなのー。』
『マコトの場所見つかったら行くのー。』
どうやら一緒には行ってくれないようだ。まあ、長旅で疲れたもんね。仕方ないよね。
それにマーニャたち王都の喧騒があまり好きじゃないようだし。
とりあえず、一人でマコトさんを探してみよう。
「あの、マコトさんっていう異世界からの迷い人知りませんか?魔道具を作成しているってきいたんですが・・・。」
ひとまず宿の従業員に訪ねてみることにした。人を探すのであれば、まずは近くにいる人から順に聞いていこう作戦である。
まあ、最初からマコトさんの居場所を知っている人にぶつかるとは思えないけど。
「ああ。マコトさんね。知っているわよ。この時間なら工房にいるんじゃないかしら?」
・・・知ってた。
まさか、こんなに早くマコトさんのことを知っている人が見つかるだなんて・・・。
「工房の場所を訊いてもいいですか?」
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