上 下
196 / 584
二章

2ー77

しおりを挟む
 

獣人の街から街道に出るまでは行きと異なりゆっくり歩いて移動した。

まあ、マーニャたちが食べながら歩いていたので、必然的にゆっくり歩くことになってしまっただけのことだが。

 

「ザックさん、プーちゃんお待たせいたしました」

 

「ああ」

 

『マユ殿、良い匂いがする。我にくれるのか?』

 

プーちゃんってば私が持っている食料に早速気づいたらしい。

目がキラキラと輝いている。

プーちゃんって食べることが好きだよなぁ。

ちなみに、マーニャたちはそれぞれ手に持っていた分は食べ終わってしまっている。

串に関してはそこら辺にポイッと捨てるわけにはいかないので回収してある。

マーニャもクーニャもボーニャもそれぞれ串を持っていた手を、まだ舐めていた。

まだ、お腹が空いているのかな?

 

「プーちゃんの分もザックさんの分も買ってきましたよ」

 

私はそう言って、鳥の串焼きと魚の串焼きを二人に見せた。

屋台から購入してここに来るまでに少し冷めてしまったけれども、それはしょうがない。我慢してもらおう。

 

『おお!これ全部我が食べて良いのか?』

 

「ダメ。ザックさんと私の分も含まれてます」

 

『ううむ。ちと、少ないのではないか?』

 

プーちゃんはトグロを巻いて、ジィーッと串焼きを見つめている。

まあ、確かにプーちゃん大きいからこれじゃ足りないと思うけどね。

でもね、予算がね。

そんなになかったりとか。

そもそも、プーちゃんはキャティーニャ村でお留守番の予定だったから、プーちゃんの食費のこと全く考えてなかったんだよねぇ。

まあ、キャティーニャ村を出る前に化粧水代としてユキさんから200万ニャールド貰ったからまだお金はあるっちゃあるんだけど。

宿代が思ったよりかかって25万ニャールドだった。

残り175万ニャールドあれば王都まで行って十分に帰ってはこれるだろうけど。

今回串焼きも一つ300ニャールドでそれぞれ10本ずつ買ったから6000ニャールドかかっているし。

まあ、でもまだお金あるからいいかなぁ。

また化粧水を作って売れば一つ2000ニャールドくらいにはなるだろうし。

王都から帰って来てから化粧水作りまくればいいか。

 

「何が食べたいかわからなかったからね。取り合えず小腹を満たして?」

 

『うむ。仕方ないな』

 

「私の分まですまない。お金は払う」

 

「あ、いいんです。今回は私のおごりで。それに私たちさえいなければもっと旅は順調だっただろうし、高い宿代払うことはなかっだろうし」

 

そうだよね。

普通5万ニャールドの宿に止まらないよね。

あれってザックさんに取って痛い出費だったんじゃなかろうか。

マーニャたちが宿勝手に決めちゃったしなぁ。

 

「良い宿だった。串焼きはお言葉に甘えさせてもらう」

 

「はい。どうぞ。マーニャ達は串焼きもっと食べる?」

 

既にマーニャたちは串焼きを1本ずつ食べているけど、もっと食べるかな?

串焼きを見せながら確認すると、

 

「「「もう、お腹いっぱいー」」」

 

三匹とも同じ返事が返って来た。

そして、三匹とも馬車に乗り込んで、横になっている。

どうやらお腹が満たされたことで眠くなったらしい。

トロリとした目がこちらを向いていた。

って、ここで寝ちゃったらまたお話する前に猫の姿に戻っちゃうんじゃあ・・・。

起きたときにボーニャがまた泣き出しそうで怖いなぁ。

 

「もう、寝るの?少しお話しない?」

 

「んー。寝るのー」

 

「眠いのー」

 

「寝させてー」

 

三匹の答えはNOだった。

仕方ない。

マーニャたちと話すためにさっさとスキルを取得すればいいんだよね。

がんばれ、私。

 

ザックさんとプーちゃんにとりあえず串焼きを一つずつ渡して、私も一つずつ食べることにした。

鳥の串焼きは残り4本、魚の串焼きは残り7本。

どうやってわけようか。

 

マーニャたちは串焼きを美味しい美味しいと言って食べていたが正直私には物足りなかった。

素材の味が生きていて美味しかったんだけどね。

濃い味付けになれてしまっている私からすると、ほぼ味付けをしていない鳥も魚も物足りなかった。

ただ、魚は新鮮だということがわかるほど臭みがなかったし、鳥もぷりぷりとしていて美味しかった。

プーちゃんも満足していたが、ザックさんは正直満足しているのかどうかわからなかった。

美味しいも何も言わなかったし。

結局串焼きは私が魚を2本と鳥を1本。

ザックさんが魚を2本と鳥を2本。

プーちゃんが魚を3本と鳥を7本食べた。

うん。プーちゃん残飯処理係決定だね。

 

「じゃあ、王都に向けて出発しよう」

 

『でも、どうやって行くのだ?』

 

「あれ?まだ場所がわからなかったの?」

 

「ああ。すまない」

 

『うむ』

 

どうやらプーちゃんもザックさんもまだ王都の場所をつかめていなかったようである。

って、私も王都の場所がどこだかわからないけれど。

私はプーちゃんとザックさんに馬車での移動日数とプーちゃんがいう移動日数が違うのではないかということを告げた。

どこくらい違うのかはわからないけれど。

すると、ザックさんもプーちゃんも「なるほど!」と頷いていた。

意外と二人とも気づかなかったらしい。

 

「それなら、まずここから北に4日くらいのところにある場所に行ってみよう」

 

キャティーニャ村からここまでが南に3日だったから、それより1日多い4日北に進んでみる。

そうすれば、そこがどこだか判断がザックさんになら付けられるとのこと。

キャティーニャ村からその街までの距離が分かれば自ずと王都までの距離もわかるだろうと。

まあ、そのためには複数回転移をしなければならないが。

プーちゃんもそれには賛同してくれて(というか、賛同するしかなかった)のでマーニャたちが馬車で寝ているうちにさっさと移動することにした。

できれば今日中に王都に転移してしまいたいし。

 

『では、いくぞ』

 

「ああ」

 

「よろしくね、プーちゃん」

 

獣人の街から北へ4日の場所にいざ転移。

 

しおりを挟む
感想 829

あなたにおすすめの小説

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

王宮を追放された俺のテレパシーが世界を変える?いや、そんなことより酒でも飲んでダラダラしたいんですけど。

タヌオー
ファンタジー
俺はテレパシーの専門家、通信魔術師。王宮で地味な裏方として冷遇されてきた俺は、ある日突然クビになった。俺にできるのは通信魔術だけ。攻撃魔術も格闘も何もできない。途方に暮れていた俺が出会ったのは、頭のネジがぶっ飛んだ魔導具職人の女。その時は知らなかったんだ。まさか俺の通信魔術が世界を変えるレベルのチート能力だったなんて。でも俺は超絶ブラックな労働環境ですっかり運動不足だし、生来の出不精かつ臆病者なので、冒険とか戦闘とか戦争とか、絶対に嫌なんだ。俺は何度もそう言ってるのに、新しく集まった仲間たちはいつも俺を危険なほうへ危険なほうへと連れて行こうとする。頼む。誰か助けてくれ。帰って酒飲んでのんびり寝たいんだ俺は。嫌だ嫌だって言ってんのに仲間たちにズルズル引っ張り回されて世界を変えていくこの俺の腰の引けた勇姿、とくとご覧あれ!

転生したけど平民でした!もふもふ達と楽しく暮らす予定です。

まゆら
ファンタジー
回収が出来ていないフラグがある中、一応完結しているというツッコミどころ満載な初めて書いたファンタジー小説です。 温かい気持ちでお読み頂けたら幸い至極であります。 異世界に転生したのはいいけど悪役令嬢とかヒロインとかになれなかった私。平民でチートもないらしい‥どうやったら楽しく異世界で暮らせますか? 魔力があるかはわかりませんが何故か神様から守護獣が遣わされたようです。 平民なんですがもしかして私って聖女候補? 脳筋美女と愛猫が繰り広げる行きあたりばったりファンタジー!なのか? 常に何処かで大食いバトルが開催中! 登場人物ほぼ甘党! ファンタジー要素薄め!?かもしれない? 母ミレディアが実は隣国出身の聖女だとわかったので、私も聖女にならないか?とお誘いがくるとか、こないとか‥ ◇◇◇◇ 現在、ジュビア王国とアーライ神国のお話を見やすくなるよう改稿しております。 しばらくは、桜庵のお話が中心となりますが影の薄いヒロインを忘れないで下さい! 転生もふもふのスピンオフ! アーライ神国のお話は、国外に追放された聖女は隣国で… 母ミレディアの娘時代のお話は、婚約破棄され国外追放になった姫は最強冒険者になり転生者の嫁になり溺愛される こちらもよろしくお願いします。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー
ファンタジー
 第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)  転生前も、転生後も 俺は不幸だった。  生まれる前は弱視。  生まれ変わり後は盲目。  そんな人生をメルザは救ってくれた。  あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。  あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。  苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。  オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...