婚約破棄されて異世界トリップしたけど猫に囲まれてスローライフ満喫しています

葉柚

文字の大きさ
上 下
191 / 584
二章

2ー72

しおりを挟む

「うっ………。」

身体が重い。
身動きしようとしても、重くて出来ない。
いったいどうしたんだろうと、首を傾げる。
やっと覚醒してきた頭は自分が獣人の街の宿に泊まったということを思い出した。
でも、なんで重いんだ?
右手も右足も動かすことが出来ない。左足も右足も動かすことが出来ない。
動くのは首だけだ。
動かすことができる首で辺りを見渡す。右を見ると黒い髪が目に入り、左を見るとキジ色の髪が目に入った。

「えっと………。」

ゆっくりと昨日のことを思い出す。

「あっ………うっ………。」

そう言えば昨日は皆に醜態を晒したということを思い出した。しかも裸まで見られて。
心配したマーニャたちと一緒に寝たんだった。
ということは髪の毛の色からすると右にいるのはクーニャで、左にいるのがマーニャかな?
足が動かないのは、ボーニャでも足に抱きついているからだろうか?
いかせん起き上がることが出来ないので確認は出来ないが。

「すごい光景ですね………。」

「えっ?」

視線を動かして声の聴こえた方を見る。
うん。マーニャの髪でわからないが、この部屋にいるとしたら、ザックさんだろうか。

「私、どうなってるんですか?」

「マーニャ様とクーニャ様が手に抱きついている。足はボーニャ様とプーちゃんさんが抱きついているな。」

「なんとっ………。」

両足が動かないと思ったらプーちゃんまで抱きついてきていたのか。
しかし、身体が動かないというのは、身体の節々が何故か痛くなってくる。

「マーニャ様たちをはがしていただけませんか?」

「無理だ。」

ザックさんからは冷たい返事がすぐに帰ってきた。

「どうして?」

「マーニャ様たちはマユさんが死んでしまうとそれは心配していた。マーニャ様たちに心配をかけたのだから、マーニャ様たちの好きなようにしてあげるといい。」

「ぐっ………。」

確かにお風呂で寝てしまってマーニャたちには迷惑をかけたもんなぁ。
マーニャたちの好きなように………か。
うう………背中痛いから姿勢を変えたいんだけどな。

「マーニャ様たちに心配をかけさせた天罰だな。」

「そんなっ………。」

どうやら、ザックさんはここから助けてくれないようである。
マーニャたちが起きるのを待つしかないのかなぁ。
背中も腕も痛くなってきたんだけどなぁ。

結局、それから二時間私は姿勢を変えることが出来なかった。
ようやく起きたマーニャ、クーニャ、ボーニャから開放されたかというと、開放されたわけてわはない。
お腹が空いたからとご飯を食べるために一瞬離れたがまたすぐにくっついてきた。
いや、可愛いんだけどね。
可愛いんだけどね、動きを制限されるとあちこちの筋肉が痛むのよ。
今は特に腰が痛い。さっきからピキピキ言っている。
ああ、ご飯を食べてた時はマーニャたちが抱きついてこなかったから、身体を自由に動かせて快適だったのに。これじゃあトイレにもいけない。
って、行けないと思ったら行きたくなってきた。

「あの………、ごめんね。ちょっと放れてくれる?トイレに………。」

「マーもいく。」

「クーもいく。」

「ボーもいく。」

「えっ?」

かくして部屋の中にあるトイレに行くにも、マーニャたちがひっついてきた。まあ、トイレの中は流石に一人にしてもらったけど。
しかし寝返りがうてなかったからか、本当に腰が痛い。
歩くのもやっとなくらいだ。
所謂寝違えたってこういうことかな?
意外と辛いんだけど。

「さて、王都に向かいましょうか。」

ご飯が終わってしばらくするとザックさんがそう告げた。
そうだった王都に向かっている最中だったということを思い出す。
王都には馬車でいくのだろうか?それともまたプーちゃんが転移で連れていってくれるのだろうか。
腰が痛いから馬車は出来るだけ避けたいものだ。

「行かないっ!」

「えっ?」

「王都になんて行かないもんっ!」

ザックさんの言葉にいつもはおっとりとしているボーニャが声をあらげて反対した。
なんで?ボーニャ?
キャティーニャ村から出発するときはそんなこと一言も言わなかったのに。なんで?
しおりを挟む
感想 829

あなたにおすすめの小説

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ
ファンタジー
 一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。 小説家になろう様でも投稿をしております。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

スキル『日常動作』は最強です ゴミスキルとバカにされましたが、実は超万能でした

メイ(旧名:Mei)
ファンタジー
この度、書籍化が決定しました! 1巻 2020年9月20日〜 2巻 2021年10月20日〜 3巻 2022年6月22日〜 これもご愛読くださっている皆様のお蔭です! ありがとうございます! 発売日に関しましては9月下旬頃になります。 題名も多少変わりましたのでここに旧題を書いておきます。 旧題:スキル『日常動作』は最強です~ゴミスキルだと思ったら、実は超万能スキルでした~ なお、書籍の方ではweb版の設定を変更したところもありますので詳しくは設定資料の章をご覧ください(※こちらについては、まだあげていませんので、のちほどあげます)。 ────────────────────────────  主人公レクスは、12歳の誕生日を迎えた。12歳の誕生日を迎えた子供は適正検査を受けることになっていた。ステータスとは、自分の一生を左右するほど大切であり、それによって将来がほとんど決められてしまうのだ。  とうとうレクスの順番が来て、適正検査を受けたが、ステータスは子供の中で一番最弱、職業は無職、スキルは『日常動作』たった一つのみ。挙げ句、レクスははした金を持たされ、村から追放されてしまう。  これは、貧弱と蔑まれた少年が最強へと成り上がる物語。 ※カクヨム、なろうでも投稿しています。

処理中です...