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二章
2ー56
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大いに困った。
マーニャたちが初代女王の力が届かない異国の地で行方不明になってしまった。
初代女王の力が行き渡っているレコンティーニ王国では、猫たちは危害を加えられることがないが、他の国では違う。
危害を容易に加えられてしまう可能性があるのだ。
早くマーニャたちを見つけなければ・・・。
「落ち着け。」
「どうしてっ!マーニャたちがっ!!」
気が焦って動転している私の腕をザックさんが掴んだ。
どうやら私、あそこに見える集落に走っていこうとしていたらしい。
それにしても、マーニャたちはこの異国の地でどこに行ってしまったのだろうか。
馬車の周りは街道となっており、猫が隠れられるようなスペースなどない。
石畳の道が続いており、綺麗に整備されている。
街道の脇には綺麗に花々が咲いている。
しかし、その影にもマーニャたちの姿は見当たらない。
私が馬車を降りるまでは馬車の中で大人しくしていたのに。
一瞬の間にマーニャたちが消えてしまった。
「マーニャ・・・クーニャ・・・ボーニャ・・・。」
異国の地で逸れてしまうなんて。
もっとしっかりとマーニャたちを見ていればよかったと思うが、後の祭りである。
「街に入ったのかもしれないな・・・。」
ザックさんがポツリと呟いた。
「えっ?」
「街からいい匂いが漂ってきている。もしかしたら匂いに釣られて・・・。」
ザックさんの言葉を聴き終わらないうちに、足が自然と街に向かう。
が、またしてもザックさんに腕を掴まれて止められた。
「放してください!どうして、止めるんですか?街にマーニャたちがいるかもしれないんですよね?」
「可能性はある。が、他国の人間が容易に入れるのかが問題だ。下手をすると密入国者として捕縛されるかもしれない。」
ザックさんは神妙な面持ちで告げた。
「捕縛・・・。」
確かにそれも一理あるだろう。
日本だって密入国者は捕まえられて強制送還させられる。
それを考えるとこの国も捕まえられる可能性は高い。
むしろ、日本は強制送還ですむが、こちらの世界ではどうなるんだろうか。
「レコンティーニ王国では密入国者はどうなるんですか?」
「レコンティーニ王国では猫好きの密入国者は一定の寄付をおこなえばレコンティーニ王国で住むことができる。他国の場合は様々だ。容認する国もあれば、厳しく罰せられる国もある。その国々が違っている。」
国によって違うのか。
それでは、まずはこの国がどこかということを確認しなければならない。
って、言葉は通じるのだろうか。
その前に街に入らずにどうやって情報を収集すべきだろうか。
問題山積である。
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