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二章

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ひょっこっと馬車のドアから顔を覗かせ、御者台を見る。
御者台からは、ザックさんの銀色のサラサラストレートな髪が見えた。
あ、よかった。ザックさんいた。
ザックさんの銀色のサラサラストレートはとても目をひくものがあるので、すぐにわかる。

馬車が止まっているので、馬車から降りてみる。辺りを見回すとやはりまだキャティーナ村だった。
ちょうど、キャティーナ村の北に向かう街道に出る道だった。
トトトッと御者台に回り込む。

「ザックさん、どうしたんですかっ?………ってプーちゃん!?」

なんということだろうか。
御者台に座っているザックさんに、プーちゃんが絡み付いていた。
しかも、プーちゃんったらザックさんに巻き付きやすいように、身体を小さくしている。
ザックさんは、プーちゃんに締め上げられているようで、時折「ぐっ」「がふっ」と言ったような苦し気な声が聞こえてくる。

「プーちゃん!なにをやってるの!?ザックさんが苦しそうだよ?」

私は慌ててザックさんに駆け寄り、プーちゃんの背中(?)をペチペチと叩いてプーちゃんをザックさんから引きはなそうとする。

「ぐっ………。」

が、どうやら余計にザックさんを締め上げてしまったようだ。苦しそうな声をあげている。

「プーちゃんっ!?やめて、やめて!!」

必死になってプーちゃんにお願いする。
このままじゃ、ザックさんが絞め殺されちゃうよ。
プーちゃんが人殺しになってしまったら、きっとプーちゃんは討伐対象に戻ってしまうだろう。
それは避けたい。

『マユ殿。こやつは、マーニャ様たちに辛い思いをさせたのだっ!許すことはできないのだっ!』

「ええっ!!マーニャたちが原因なのっ!?」

どうやら、マーニャたちがプーちゃんを呼び寄せたようだ。馬車の乗り心地が悪いってことで、わざわざプーちゃんを呼び寄せたらしい。
マーニャたちったら………。

『ふんっ!我がマーニャ様以外のために動くわけがなかろう!マーニャ様たちのためだけに働くのだ!』

言い切ってるよ。
猫(子猫)にいいように使われている竜って………なんだか情けなく思ってしまうのは、私だけだろうか。

「でも、王都まで連れて行ってくれるのよ?それに、道がデコボコしているからどうしても馬車が揺れてしまうのよ。仕方ないの。ザックさんのせいじゃないわ。」

『………だが、マーニャ様たちは馬車にうんざりしておる。』

「そうね、私もこんなに揺れるのにはうんざりしているわ。でも、歩いてなんて行けないし………。」

馬車で王都まで3日だという。歩けば倍はかかるだろう。
それに、普段そんなに歩いていないから王都まで歩いていけるとは思えない。

「………そうだっ!」

いいことを思い付いてしまったぞ。

「プーちゃん魔法使えるんだよね?」

『もちろんだとも。我にできないことはないっ!』

プーちゃんは、鼻息も荒くふんっ!と胸を張っている。
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