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二章
2ー39
しおりを挟む『・・・トマト・・・このトマトはマユのトマトではない・・・。』
プーちゃんは呆然とそんなことを呟いた。
まあね。私の作ったトマトが村長さんの家にあるはずがない。
だって、村長さんにトマトのおすそ分けなんてしていないし、それに、トマトはもれなくプーちゃんが全部食べちゃうし。
『魔力が篭っていないトマトはトマトと呼べるのだろうか・・・。』
「「「「魔力!?」」」」
村長さんとユキさんと、マリアと私の声が綺麗にハモった。
むしろ、魔力が篭っているトマトが不思議でならないんだけれども。
村長さんたちも驚いているということは、魔力の篭ったトマトは聞いたことがないんだと思う。
『うむ。魔力だ。マユの作ったトマトには良質の魔力が篭められていた。でも、このトマトからは魔力が感じられない。良質な魔力は摂取するだけで魔力の最大値があがるのだ。つまりトマトを摂取するだけで強くなる。』
プーちゃんが丁寧に説明してくれるけれども、私は特別トマトを栽培するときに何かをしているわけでもない。
最近は、プーちゃんに水遣りをお願いしちゃっているし。
「魔力が篭められたトマトなんて聞いたことないわ。それに、マユの作ったトマトを食べたことがあるけれど、魔力が篭っているかなんて判断つかなかったわ。」
マリアがそう告げた。
やっぱり、魔力が篭められたトマトなんてマリアも聞いたことがなかったようである。
しきりに頷いている村長さんとユキさんも初耳のようだ。
『マユの作ったトマト・・・食べたい。』
しんみりとプーちゃんが呟くが、今日も私の家で食べて来たのではないだろうか。
ああ、寝坊して食べ損なったところにマーニャから呼び出しが来たんだったっけ。
ってことは、今日赤らんだトマトはプーちゃんに食べられていないということか。
「マユの作ったトマト鑑定してみたいわね。」
「そうだね。帰ったら鑑定してみようか。」
そう。つまり今日はトマトがまだ生っている。
プーちゃんに一つ残らず食べられる前にトマトを鑑定しなければならない。
「異世界からの迷い人には不思議な力があるもんじゃのぉ。」
『マユのトマト・・・。』
「プーちゃん今日はトマト食べないで!」
『そ、そんなっ!!』
しんみりとしているプーちゃんにトマトを食べないように伝えると、プーちゃんはショックを受けたように悲鳴を上げて固まってしまった。
そんなに落ち込まなくても・・・。
「あ、いや。プーちゃん、トマト鑑定してみたいから、鑑定した後に食べていいからね。」
私は慌てて言いなおした。
でも、プーちゃんがこれ以上強くなったらプーちゃんを討伐できる冒険者がいなくなってしまうのではないだろうか。
それにはトマトを食べさせない方がいいのだろうか。
でも、プーちゃんはマーニャたちの友達だからって討伐対象から外れたんだっけ?
ならトマト食べさせてしまってもいいのかなぁ。
化粧水の出来も気になるところだけれども、焦れたプーちゃんにトマトを食べられてしまっても困るから一旦、家に帰ることにした。
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