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二章
2ー32
しおりを挟むテレビではオークションの様子が中継されている。様々な品物と様々な人が札をあげ落札価格を提示している。
その様子をプーちゃんは凝視していた。
よっぽどテレビが不思議な様子だ。
しかし、私が出品した化粧水はすでに落札されてしまった。結局いくらになったのだろうか。これ、中継みてないと落札価格わからないのかなぁ。
「大丈夫よ、安心して。結果はオークションが終わった後に直接教えてくれるから。」
「よかったぁ。危うくプーちゃん絞めちゃうところだったよ。」
「いいんじゃない?絞めちゃっても。」
マリアもにっこり笑いながら結構酷いことをいうような気がする。
でも、まあプーちゃんだから仕方ないか。
オークションの結果は後の楽しみにして、他にどんな商品が出品されているのかも気になるし。まあ、入札もできないんだけどね。
そう思って中継をみていたが、はっきりと言って欲しいと思うものは最初の炬燵だけしかなかった。
あとは、確かに珍しいとは思うんだけど使い道がわからなかったり、別に必要とは思わないようなものばかりだった。
【竜の爪】なんてものも出品されていたが、正直なにに使うのかわからない。置物なのだろうか。それにしても落札額が億だったのには驚いた。
チラッとプーちゃんの前足を見つめる。
「あれが億かぁ・・・。」
ボソッと呟いたら、テレビを凝視していたプーちゃんがぎょっとしたようにこちらを振り向いた。
どうやら聞こえたようだ。
「マユ、売るの?手伝うよ?マーニャ様たちにお願いすれば可能だよ。爪剥がすの。」
「そうだね。マーニャたちに頼めば可能かもね。」
「「「にゃっ?」」」
『・・・』
意味ありげにマーニャたちとプーちゃんを交互に見る。
マーニャたちはオークションの様子を見ていなかったのか、なんのことだかわかっていないようだ。反対にプーちゃんはオークションをしっかりと見ていたのでブルブルと震えてこちらを見ている。
でもさ、鱗と違って爪を剥がすのは痛そうだよね。鱗剥がすのも痛そうだけど、鱗は脱皮するといくらでも取れるらしいし。
でも爪はね。生爪剥がすのは痛いよね。
今は暮らすのに切羽詰まってないから爪は諦めよう。
それに、流石にプーちゃんが可哀想だし。いきなり億のお金をもらってもどうしていいかわからないし。
「やめるの?」
「今は、ね。」
そう答えるとマリアは残念そうに「そう………。」とだけ頷いた。
プーちゃんはあきらかにホッとしたように身体の力を抜いた。
マーニャたちはまだ何のことだかわからずに首を傾げているが、プーちゃん絡みだということだけは伝わったようで、プーちゃんをジィーッと見つめていた。
しばらくして、
『はろぉ~。』
という、鑑定士さんの声が脳内に響いてきた。
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