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二章

2ー26

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【炬燵】それは、冬の必需品であり、それは悪魔のごとき一品でもある。
炬燵に魅入られてしまうと炬燵から出ることがなかなかできず炬燵で寝てしまうことも多々ある。
日本が生み出した魔性の暖房器具である。

「欲しい・・・。炬燵欲しい。冬じゃないけど、炬燵欲しい。春だけどたまに寒い日あるし、炬燵欲しい。」

私は思い出す。
日本の部屋にあった炬燵を。
一人用の炬燵だったから小さかったけど、冬はとても重宝していた。
それこそ冬はベッドが不要でほとんど炬燵で寝ていたほどだ。
そんな炬燵がこの世界にも存在した。
この世界は常春の世界だけれども、やはり炬燵も恋しい。

「マユが壊れた。でも、炬燵を買うのはお金かかるよ?」

「ぐぅ・・・。」

「しかも、オークションに出品者として参加したけど落札権限はないよ?」

「うぐぐっ・・・」

そうだった。
出品はしたけど、落札は出来ないんだった。
落札するためには、一定額の寄付をしなければならないんだった。
それこそ、王都で一軒家が買えるくらいの値段の寄付が必要なのだ。
どうにかして、炬燵を手にいれられないものか・・・。

『でわぁ~。100万ニャールドからぁ~入札を~開始しますぅ~。』

炬燵のオークションが始まったようだ。
というか、100万ニャールドっ!?
日本で言うところの約100万円。
あり得ない。
日本だと安いものであれば1万円も出せば購入できたのに・・・。

「・・・炬燵ってとっても高いのね。」

「100万ニャールドなら安いよ。見てて、これからどんどん値段が上がっていくから。」

100万ニャールドで驚いているのに、マリアは炬燵の値段がこれ以上上がっていくという。
一体何故?
やっぱり私のように炬燵に魅了された人がいっぱいいるのかしら。

『あらぁ~。200万ニャールドォ~ですねぇ~!他にはぁ~いますかぁ~!?』

『300!』

『350!』

『うふふふふ~。あがりますねぇ~。現在ぃ~350万ニャールドですぅ~。』

『500!!』

『500万ニャールドでましたぁ~。さすがですねぇ~!他にいなければぁ~500万ニャールドでぇ~10番さん落札にぃ~なりますぅ~。』

本当に、あっという間に500万ニャールドになってしまった。
これは買えない。
この世界の炬燵は高級品でした。

『1000!』

『1000万ニャールドでましたぁ~。他にはぁ~いらっしゃいますかぁ~?』

『1100!』

『1200!!』

『1250!』

『1300!!』

すごい。
まるでこちらにも熱気が伝わってくるようだ。
どんどん値段が釣り上がっていく。
もう、ここまでくると一般庶民にはどうあがいても購入することは不可能だ。
炬燵は諦めるしかないのかなぁ~。
でも、なんで炬燵の値段がここまで跳ね上がるのだろうか?

『現在ぃ~1300万ですぅ~!他にはぁ~いらっしゃいますかぁ~?』

『2000!!』

『あらぁ~。2000万ニャールドにぃ~なりましたぁ~。どうでしょう~?他にはぁ~いらっしゃいますかぁ~?』

2000万ニャールドになったところで、誰も声を上げなくなった。
どうやら2000万ニャールドで決着がついたようだ。

『でわぁ~。2000万ニャールドでぇ~1番さんの落札にぃ~なりますぅ~。』



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