婚約破棄されて異世界トリップしたけど猫に囲まれてスローライフ満喫しています

葉柚

文字の大きさ
上 下
128 / 584
二章

2ー9

しおりを挟む

ソフィアさんは相変わらずニコニコしている。
マリアは少しうんざりとしたような表情だ。
それもそうだろう。
人の味覚を壊してまで薬草茶を受け入れてくれる人を探したいだなんて。

「ダンさんだけじゃ駄目なんですか?」

「駄目です。だって、ダンさんは既に結婚されてましたから」

あ、そこは日本と同じ一夫一妻制なのか。安心した。
ソフィアさんにも他人の旦那を奪うようなことはしないという良識はあるようだ。

「あれ?でも今ご結婚されているんですよね?その人は薬草茶飲めたんですか?」

「いいえ。今のところ毎日一口でギブアップしてますねぇ」

そう言って、ソフィアさんはにっこりと微笑んだ。
旦那さん、薬草茶飲めないんだ。
それでも毎日一口は飲もうとしているんだ。
なんというすごい人なんだろう。

「私の薬草茶を必ず飲めるようになるっていうから結婚したんですけどねぇ。今のところ飲めないんです」

「そうなんですか」

「ええ。毎日飲んでいればそろそろ味覚が破壊されてもいいと思うんですけど・・・」

「あの・・・無理に飲ませない方がいいのでは?それか薬草茶の味をどうにかするとか?」

「いいえ。飲めるまで頑張ってもらいます。うふふっ。最近では味覚を鈍くするための薬も調合しているんですよ」

ソフィアさんは相変わらずにこにこ笑っている。
笑っているが内容は笑顔で話すようなことではないような気がする。
味覚を鈍くする薬って薬草茶を飲ませるためだけに調合していないだろうか。
そこまでして飲ませたいものなんだろうか、私にはよくわからなかった。

「さて、そろそろ化粧水ができる頃じゃない?」

ソフィアさんと私の会話をぶった切るように言ったのは未だに苦い顔をしているマリアだった。
そろそろこの話題も収束させたかったので安心した。
まだまだソフィアさんは話足りないようだったが。
しかし、ソフィアさんに付き合わされる旦那さんは大変そうだ。
それにしてもこの話題だけで三時間も時間が経つとは怖いものである。

私たちは化粧水の完成具合を確認するためにソフィアさんの工房に向かった。
工房と言ってもお店と工房が一緒になっているので、すぐに着くのだが。
すでに錬金は終わっていたようだった。
私は、まず美味しくなぁれと念じた方の錬金釜の蓋に手を当てる。
すると淡く光が放たれた。

「開けますね」

そう言って、蓋を握る手に力を入れた時だった。

ポフッ。

私の手にふわふわな猫の手が置かれ、錬金釜が一際眩い光を放った。

しおりを挟む
感想 829

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

聖女なのに婚約破棄した上に辺境へ追放? ショックで前世を思い出し、魔法で電化製品を再現出来るようになって快適なので、もう戻りません。

向原 行人
ファンタジー
土の聖女と呼ばれる土魔法を極めた私、セシリアは婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡された上に、王宮を追放されて辺境の地へ飛ばされてしまった。 とりあえず、辺境の地でも何とか生きていくしかないと思った物の、着いた先は家どころか人すら居ない場所だった。 こんな所でどうすれば良いのと、ショックで頭が真っ白になった瞬間、突然前世の――日本の某家電量販店の販売員として働いていた記憶が蘇る。 土魔法で家や畑を作り、具現化魔法で家電製品を再現し……あれ? 王宮暮らしより遥かに快適なんですけど! 一方、王宮での私がしていた仕事を出来る者が居ないらしく、戻って来いと言われるけど、モフモフな動物さんたちと一緒に快適で幸せに暮らして居るので、お断りします。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

処理中です...