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二章
2ー7
しおりを挟む「はい。絞りたての薬草茶です。味わって飲んでくださいね」
ソフィアさんは私の前にだけ薬草茶を差し出してきた。
「あれ?マリアは?」
「マリアちゃんは薬草茶が苦手なのよ。こんなに美味しくて美容にもいいのにね」
ソフィアさんはそう言って苦笑した。
マリアは相変わらず苦い顔をしている。
マリアにも苦手なものがあったんだ、なんて軽く思いながらソフィアさんが淹れてくれた薬草茶をなんのためらいもなく、一口飲む。
「・・・グッ・・・フ」
一口、口に含んだだけで鼻の奥に響くような鋭い臭い。
まるでカメムシを口の中で噛んでしまったような青臭さが口の中に広がる。
かなり強烈な味と臭いだった。
薬草茶について何も言わなかったマリアを横目で軽く睨む。
「あら、マユさんのお口には合いませんでしたか?なら、もったいないので私が残りを飲んじゃいますね」
ソフィアさんは気にした様子もなく私の飲みかけの薬草茶を一気に飲み干す。
気にした様子もないので、もしかすると薬草茶を飲んだ時の私の反応は間違いではないのかもしれない。きっと、他にも薬草茶を受け入れられなかった人が多数いるんだなと感じた。
「こんなに美味しいし、身体にいいのに薬草茶苦手って人多いんですよねぇ。マユさんは異世界からの迷い人だっていうから少し期待していたんですが、やはりダメでしたか・・・」
ん?
この人、あえて私で実験した?
ニコニコ笑っているけど、なんだか平気で人を実験台にしたような気がする。
いや、気のせいかもしれないけど・・・。
「この村の人全員に試しましたが、未だに美味しいって言ってくれる人いないんですよねぇ。みんな飲み残すんです」
そう言って首を傾げるソフィアさん。無邪気な感じで告げる内容はこの村の人全員で実験しましたと言っているようなものだ。
「あ、でも一人だけ飲み干してくださった方がいました」
そう言ってポッと顔を赤らめるソフィアさん。
ん?
もしかして、その薬草茶を飲み干したって人が旦那さんか?
これからノロケ話に発展するのだろうか?
身構えて、ソフィアさんの話を聞く。
「誰だったんですか?」
情報通のマリアも、この薬草茶を飲み干した人がいるというのは初耳だったのか、静かに耳を傾けている。
「うふふ。食堂のダンさん」
「えっ?」
「あ、なるほど」
驚く私とは反対に納得するマリア。
どうして?
だって、ダンさんはサラさんと結婚しているはずで。
この世界って一夫多妻制だったりするの!?
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