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一章

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マリアは朝御飯も食べずにかけつけてくれたとのことだった。
なので、マリアに今朝買ったアンさんのパンを出した。

「これ、よかったら食べて?」

「ありがとう、マユ。ちょうどお腹が空いていたの」

『我の分はもうないのか?』

マリアが笑顔で受けとるとその様子を見ていたプーちゃんがジッとこちらを見てきた。
さっきまで、かなりの量のパンを食べていたかと思うが、まだ食べれるのだろうか。

「もっと食べれるの?」

『うむ。パンとやらは美味であった』

美味って・・・。
どうやらプーちゃんはパンがお気に入りのようだ。

「リュリュさんが持ってきたのでもいい?私が買ってきたのはマリアにあげたやつで最後なの」

『構わぬ。あやつは悪いやつではないからの。ただ変態ってだけでマユには極力近づいてほしくないが。パンが悪いわけではないのでな。我がもらう』

「そう、じゃあこれ全部食べちゃっていいよ」

私はそう言って、リュリュさんが買ってきた5個のパンをプーちゃんの前に並べた。

『このマユも買ってきていた外がカリカリしていて中にドロッとしたものが入っているのはいらぬ』

プーちゃんは前足(?)で、こんがり焼けて美味しそうな匂いを放っているカレーパンを指差した。
このカレーパン美味しそうなんだけど・・・。

「そう?じゃあ私がもらっちゃうよ?」

『マユの味覚がわからぬ。このような舌に刺激が走るもののどこがよいのか・・・』

「辛いのがダメなの?辛いものも慣れると癖になるわよ?」

『・・・我には不要だ』

どうやら、プーちゃんは辛いものは苦手らしい。
眉を潜めてカレーパンを睨み付けている。
私は、カレーパンを手にして一口かじった。
とたん口の中に広がる香ばしい香りとピリッとした程よい香辛料の辛さ。
中に入っている具はよく煮詰められていて原型を保っていないが、その分素材の旨味が凝縮されている。
まわりサックリ、中はトロリ。
絶妙な食感を私にもたらしてくれる、アンさんのカレーパン。
こんな美味しいものが苦手だなんて、プーちゃん損をしているよ!

『マユは美味しそうに食べるのだな・・・。我も食べたくなった。それをよこせ』

「あっ!!」

「プーちゃんってかわいいね」

プーちゃんは私の食べかけのカレーパンをひょいっと奪い取るとパクッと口の中に放り込んでしまった。
私が恨めしげな声をあげる横でマリアが笑ってその様子を見つめていた。

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