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一章

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「ここが、村で唯一の食事処兼宿屋よ」



そう言って案内されたのは村の中で一際大きい家だった。

木造だけども、柱に太い木が使用されていてとても頑丈そうだ。

でも大きいといっても、3階立ての建物だ。

2階と3階には10畳ほどの部屋が4つあり、客室になっているらしい。

1階は食堂と経営をしている夫妻の部屋があるとのことだ。



「ここのダンおじさんの作る料理は村で一番美味しいよ。

 なんたって、料理のスキルレベルが300を超えているそうなの。

 一般の人のスキルレベルが50前後だからとてもすごいことなのよ。機会があったら食べてみてね」



ただ、残念なことに食堂は11時から14時、18時から20時までしか開いていないそうだ。

ここで毎朝の食事を食べることはできなそうだ。

朝は自炊するしかないらしい。

自炊苦手なもので、いつもコンビニや近くの喫茶店ですませていたのに。

自炊必須な生活になりそうだ。



「他には食べ物を売っているお店はないの?」



「後はアンおばさんのパン屋さんがあるわ。ここはバウンドケーキが美味しいのよ」



食堂兼宿屋の隣の小さな家がパン屋だった。

こちらは、9時から17時までが営業時間らしい。

パンを作って売るには、製菓スキルが必要になるらしい。

お店を開けるレベルは100~だそうだ。

丁度お店が開店したところだったのでマリアと一緒にお店の中に入ってみた。



「おはようございまーす。アンおばさん。マユさんが昨日からこの村に住み始めたから挨拶にきたの」



「おはよう、マリア。ああ、迷い人のマユさんだね。村長から聞いているよ。私はアン、よろしくね。

 ここでパンやケーキを作って売っているんだ。これは、お近づきにあげる。食べてみて」



「ありがとうございます。美味しそう」



アンさんから菓子パン5つと食パン1斤を受け取った。

焼きたてのようでまだホカホカと暖かく柔らかい。



「食べ切れなかったら保管庫にいれておくといいよ。保管庫の中は時間が進まないから入れておけばいつでも出来立てのパンが食べられるよ。」



「なるほど。保管庫って便利ですね」



「便利だけどあの家の保管庫容量が少ないわね。

確か、10種類までしか入れられなかったと思うわ。ただ猫様たちの餌は別枠、いくつでも入るわ。

お金がたまれば村の魔道具やでもっと大きな保管庫を購入できるから覚えておいてね」



10種類か。

確かに少ないかも。

部屋を探索してみたが冷蔵庫なんてなかったので、痛みが早い食材は漏れなく保管庫に入れる必要がありそうだ。

これは早々にもっと容量を入れられる保管庫を購入した方がよさそうだ。



「今より大きな保管庫を購入するにはいくらくらい必要ですか?」



「そうね。在庫状況や容量によって値段はまちまちだけど新品で3万~かな。

 中古なら1万~売ってるよ。

 ただ、村の魔道具屋さんに在庫がない場合があるから取り寄せになっちゃうかもしれない。

 取り寄せになると納品まで10日前後かかっちゃうかも。」



10万ニャールドを支給してもらっているから購入はできそうな金額だ。

ただ、収入源が今のところ安定していないから、しばらくは何が必要なのかを見極めてから購入しないとすぐに支給された金額がなくなりそうだ。



そういえば、大事なこと忘れていた。

お金の使い方を聞かなきゃいけなかった。

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