上 下
6 / 584
一章

しおりを挟む
「ここ、どこだっけ?」



ぴちちち。

ぴちちちち。



と、窓の外から小鳥の鳴く声がする。

朝がきて、起床したあと寝ぼけながら周りを見渡す。

木で出来た家具と木の温もりが感じられる壁が見える。

自分の家はこんなんではなかったような気がする。

違和感を感じながらも、でも心地良い感じの部屋だ。



足元でもぞもぞと動くものがある。

目線を足元に向けると、ベッドの上で3匹の猫が思い思いに大の字で眠っていた。

その姿を見た瞬間、昨日起きたことが思い出される。



ああ、そっか。

異世界に来ちゃったんだっけ。



現実ではあり得ないことだから無意識に昨日のことは夢だったと思っていたが、違ったようだ。



足元ですぴょすぴょ安心しきって寝ている猫たちを見ながら癒されるのを感じる。



「そういえば、仕事もないんだった。でも、当分の資金は貰えたし・・・」



慌てて飛び起きて仕事をしなくてもいいなんてなんて素晴らしいんだ。

ここには、古い考えに囚われ融通の利かない上司もいないし、手を煩わされる部下もいない。

そう思うとすこし、ホッとする。

これからの生活に思うところはあるけれど。



「今日は何をしようか。」



そんなことを考えることなんて、ここ数年はなかった。

平日は仕事三昧だし、土日だって次の月曜日からの仕事のことを考えていて正直休まらなかった。

今日は何をしようかなんて、考えることができるスローライフもいいかもしれない。



「って、朝ごはんどうしよう。」



昨日のうちに食材を用意するのを忘れていた。

この家には保管庫というものがあり、保管庫の中に入っているものは時間経過を受けないため保管庫に入れたままの状態で取り出すことができる。

その中に何か入っているだろうか。。。



私はベッドから猫たちを起こさないようにそっと下りると、キッチンの脇にある保管庫の中を覗き込んだ。



中には3つの缶詰と、3つの小袋と真っ白い手紙が入っていた。



「食べれるのかしら・・・?」



缶詰にも、小袋にも猫のシルエットが描かれている。

迷いながらも、手紙を開封した。



手紙には猫たちへの食事の方法が書かれていた。

基本的には一日2~3回に分けて、1匹につき缶詰一個と小袋一袋を食べさせて欲しいという内容だった。



「やっぱり、私の朝ごはんじゃないのね・・・。朝ごはんを売っているところはあるのかしら」



異世界生活2日目にして難関に突き当たってしまった。
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

最後の思い出に、魅了魔法をかけました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:362pt お気に入り:67

私のような彼と彼のような私

jun
恋愛 / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:794

記憶喪失の異世界転生者を拾いました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:40

婚約破棄を3時間で撤回された足枷令嬢は、恋とお菓子を味わいます。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:298pt お気に入り:2,115

処理中です...