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一章

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「ごめん。真由、別れて欲しい」



30歳のころから3年付き合っていた鈴木裕太は七夕の夜、唐突に別れを告げてきた。

確かにお互い忙しくて会う機会は最近では1年に2~3回に減っていた。

それでも、忙しい合間を縫って会ったときに、プロポーズされて指輪も贈ってもらったし、裕太の両親に挨拶だってした。

私の両親は、私が28の時に交通事故で亡くなってしまっているから、墓前に挨拶を二人でした。

それなのに、別れる理由がわからない。



「どうして?」



喧嘩した訳でもないのに。

性格だって不満はない。

ちょっと優柔不断なところがあるけれど、そこは私がカバーしていけばいいと思っている。



「真由といると疲れるんだ。僕より仕事もできるし、僕なんかいなくても、一人で暮らしていけそうだし。ずっと考えていたんだ。付き合った当初から」



「付き合った・・・当初から?じゃあなんて、結婚しようなんて言ってきたのよ?」



無理して付き合ってくれなくてもよかったのに。



「だって、真由もう30過ぎて貰い手いなくて可愛そうだなって思って・・・」



バツが悪いように言ってくれてるけど、それってとても失礼なことだよね?

なんか今すごく喧嘩を売られているような気がする。



「ごめん。それに僕、他に結婚したい人ができたんだ。

去年から付き合ってて、昨日、子供ができたって言われたんだ。子供を私生児にするわけにはいかないし。彼女、まだ大学でたばかりの22才なんだ。社会人になったばかりで、生活力だってまだないし。僕が彼女と子供の面倒みないとって。だから、別れてくれる?真由なら一人で生きていけるでしょ?」



「ちょっとまって!去年から付き合ってた?

私にプロポーズしたの去年のクリスマスイブじゃない!どういうこと!それに付き合ってたって、二股じゃない!」



「だから、ごめんって。僕、優柔不断じゃない?だから、告白されて断れなくてズルズルと。ちゃんと彼女には言ったんだよ?君と付き合ってるって、でも、それでもいいから!って言われちゃってじゃあって付き合うことにしたんだ。可愛かったし。」



どんだけ優柔不断なんだよ、おまえは。

優柔不断なところは私がカバーすればいいと思ってたけど、これはもうどうしょうもない。

彼女さんには子供がいて、私にはいない。

子供に罪はない。

それに婚外子がいるような人と結婚する気もない。

蔑ろにされた気がするけど、とっても殴り倒したいけど、グッと堪える。



「いいわよ。別れるわよ。その代わりその彼女と子供のことはしっかり守りなさいよ。それから、貴方の両親には貴方から説明しておいてよ」



「ありがとう!真由はそういうと思っていたよ。僕の両親には、もう言ってあるんだ。なんでか、孫が出来るのにちっとも嬉しそうじゃなかったけど、優花と結婚するのは認めてくれた。でも、結婚後は一切援助しないって言ってたけど、僕ももう35だしね。妻と子供くらい、一人で養える。」



そう言って、裕太は笑顔を浮かべて去っていった。

とういか、それって呆れられて勘当されたんじゃ。まあ、もう他人なんだから知ったことではないけど。



それにしても、裕太が優柔不断で仕事もあまり出来るとは言えないから、裕太が無理しなくていいように、仕事は私が頑張って稼いで生活していこうと思っていたけど、それが仇になったようだ。

知らないうちに、裕太のプライド傷つけてたのかな。





もうどうでもよくなってしまった。

一人だし、頑張る気力もでない。

このままふらっと何処かに消えたい。

仕事だって上司と部下との間に挟まれて、なにかと精神的にストレス感じてたし、裕太と結婚しないんだったら、こんな仕事しなくても、一人で暮らしていけるだけの仕事に転職したっていい。

残業だってない仕事に変えたい。



「ストレスに煩わされない世界にいきたいわぁ。猫に囲まれてまったり暮らせたらなぁ」



そう呟いた瞬間目の前が真っ白になった。

まるで、大量のフラッシュを浴びているようだ。



そうして、フラッシュがやんだ直後に見た風景は、広大な森が広がっていた。

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