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「にゃー。(ダンジョン行くのー。)」

だが、マーニャは諦めなかった。

連れて行ってくれないのならば、自らの足で歩くまでとずんずんと山を登っていく。

それを慌てて追う冒険者たち。

「ま、待ってくれ。猫様。この黒猫様たちを置いていくのかい?」

「にゃーにゃにゃにゃー。(ついてくるのー。ダンジョン行くのー。)」

尻尾を大きく振り回しながらマーニャは答えた。

それが伝わったのかどうかわからないが、デートリッヒがひょいっとマーニャを抱き上げた。

「にゃ?」

驚いてデートリッヒを見上げるマーニャ。

「か、可愛い。もふもふ。想像以上のモフモフ感。なにこれ、たまんねー。」

いや、まったく伝わっていなかったようだ。

デートリッヒはただリーダーが手放した今ならマーニャを抱き上げるチャンスだと抱き上げてマーニャのもふもふを堪能したいだけだった。

「にゃー。(ダンジョン・・・。)」

クテッと顔を俯かせるマーニャにびっくりしたのはデートリッヒだった。

慌てながらマーニャの頭をそっと撫でる。

「猫様。どうしたんだ。ああ、俺が触ったからか。俺が抱き上げたからか。嫌だったのか。そうなのか。いや、でもおろしたくない。おろしたくないんだよ。猫様。猫さまぁあああああああっ!!!」

「にゃあ・・・。(うるさい。耳元で叫ばないでほしいの。)」

気落ちしているところに、耳元で叫ばれてマーニャの元気はさらにしぼんだ。

「にゃーにゃ!!(マーニャ!!)」

「にゃーにゃ!!(マーニャ!!)」

そんなマーニャの姿をみて、クーニャとボーニャがマーニャの側に駆け寄ろうともがきだす。

「おぉっと。お前もおりたいのか。・・・名残惜しいが。」

「あら。あなたもおりたいのね。・・・また、触らせてね。」

そう言って、ロージェットとパーセリーがクーニャとボーニャを地面にそっとおろした。

その瞬間、クーニャとボーニャがマーニャの元に駆け寄る。

そうして、デートリッヒの左右の足に抱き着き、マーニャの元へとデートリッヒの足を爪を立てながらよじ登る。

「いてっ!!いてっ!!」

するどい猫様の爪は容赦なくデートリッヒの足を突き刺した。

それでも、デートリッヒはマーニャを落とさないように我慢をして、なんとかゆっくりとマーニャを地面におろした。

すると、クーニャもボーニャもデートリッヒに登るのをあきらめてマーニャに駆け付ける。

そうして、マーニャの左頬をクーニャが、右頬をボーニャがペロペロと舐め始めた。

その様子はまるで二匹がマーニャを慰めているようにも見えた。

「はあ。猫様、尊い。」

「・・・ぐすっ。痛かったけど、猫様可愛い。」

「この瞬間を永久保存したいっ。」

「目に焼き付けておかないと・・・。」

4人の冒険者たちは慰め合う猫様を見て、その尊さに思わず唇を噛み締めた。

「にゃーにゃにゃにゃ。(この人たちあてにならないから、あたしたちだけでダンジョン行くのー。)」

「にゃー。(そうだねー。ちょっと歩くの大変だけどいつまでもここにいたら日が暮れちゃうもんね。)」

「にゃああん。(早く行こー。)」

マーニャたちは冒険者たちをしり目にさっさと山にあるというダンジョンに向かうことにしたのだった。

 

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