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しおりを挟む「まあ、ユリア待っていたわ。あなたならきっと来てくれると思ったもの。それで、ちゃんとにシルキーはそこにいるのかしら?」
中から王妃殿下のものと思われるはずんだ声が聞こえてくる。
緊張感を全く感じないさせないその声からすると部屋の中にはどうやら見張りはいなさそうだ。
見張りがいないとしたら、何人もいたと思われる国王陛下と王妃殿下の近衛兵たちはどこに行ったというのだろうか。
「……はい。ここにおります。王妃殿下。」
シルキー殿下はドアの前でドアの中にいるであろう国王陛下と王妃殿下に向かって一礼をする。
「そう、中には国王陛下と私しか意識のあるものはおりません。ドアを開けて入っていらっしゃい。」
王妃殿下はそう言ってシルキー殿下にドアを開けるように促した。
というか、王妃殿下の言い回しが気になる。
国王陛下と王妃殿下しか部屋の中にいないと言えばいいのに、なぜ意識があるのが国王陛下と王妃殿下の二人だけと言うのだろうか。
シルキー殿下は大きなため息をつきながら、警戒しながらドアをゆっくりと開けた。
そして部屋の中の様子を見てさらに大きなため息をついた。
いったい部屋の中がどうなっているのか、シルキー殿下の身体が邪魔をして部屋の中の様子を伺うことができない。
「……はあ。……これは、王妃殿下がなされたのですか?」
シルキー殿下がため息交じりに王妃殿下に問いかける。
「まあ。私が?か弱い私にはそのようなこと……。ねぇ、陛下。」
王妃殿下が甘えたように国王陛下に問いかける。
「ん?王妃はとても頼りになるからな。そこらの近衛兵では王妃には太刀打ちできぬでだろう。」
国王殿下は満足気に笑っているようだった。
「王妃殿下は流石ですわ。」
ユリアさんはうっとりとした声で小さく呟いた。どうやらユリアさんは王妃殿下に陶酔しているようである。
「さて、ではここから出ましょうか。ここで気を失っている近衛兵たちは……どうしたらいいと思いますか?シルキー。」
「……拘束してこちらに放置します。その後衛兵たちに回収してもらい牢に繋げて事情を確認します。」
「そうね。では、そのようにお願いするわ。陛下、歩けますか?」
「ああ。問題ない。」
国王陛下は王妃殿下の手を取って立ち上がった。そして、部屋のドアに向かう。
私は国王陛下と王妃殿下が部屋から出てくる気配を感じて深く礼をして二人が出てくるのを待つ。
「あら?マリアちゃんじゃないの。あなたも来てくれたのね。嬉しいわ。」
「……もったいないお言葉にございます。」
私の前で王妃殿下は足を止めて、私に声をかけてくる。
私は深くお辞儀をしたまま答える。
「ふふ。顔をあげてちょうだい。」
王妃殿下の優しい声に釣られるように私は伏せていた顔を上げた。
「あっ……。」
そこには良く知っている人物が私を見てにこやかに笑っていた。
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