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しおりを挟むシルキー殿下の痛めた手からは黒い靄みたいなものが立ち上がっていた。
「大丈夫」だとシルキー殿下は言っているが痛みが酷いのか脂汗が額に滲んでいる。
傷が深いとかそういうのではなく、強い魔力が込められているように思える。
「シルキー殿下になにをされたのですかっ!」
相手は国王陛下の妾妃様であるユフェライラ様だ。
不敬にあたるかもしれないが、そんなことは言っていられなかった。そもそもユフェライラ様よりも、シルキー殿下の方が身分は高い。そのシルキー殿下にユフェライラ様は危害を加えたのだ。国王陛下と王妃殿下もユフェライラ様が捕えたと先ほどおっしゃっていた。
つまり、この時点でもうユフェライラ様の国家反逆罪が確定しているのだ。
「さすが時期王妃候補とだけあるわね。でも、私、あなたのそういうところが嫌いなの。あなたは私の手足となって私の言う事だけを聞いていればいいのよ。」
ユフェライラ様はそう言って顔を歪めた。
「私は傀儡になる気はありません。」
「そう。でも、あなたは私の言うことを聞くしかないのよ。」
ユフェライラ様はそう言って私に近づいてくる。
そして、私の手を取り自らの方に引き寄せようとする。
「ぎゃあっ!」
しかしながら、ユフェライラ様は私の手を取ろうとして大きな悲鳴を上げて、私から弾かれたように後ろに飛び跳ねた。
ユフェライラ様は私を掴もうとした右手を抱えて蹲る。
なにが起きたのか理解できずに私はただユフェライラ様を呆然と見つめた。
「まさかっ……。そんなバカな……。ユースフェルトはアンナライラを気に入っていたはずなのに、なぜ……。」
ユフェライラ様はくぐもった声で納得ができないと訴える。
「王族はユースフェルト殿下だけではなく、ここにいるシルキー殿下も王族の直系なのよ。」
ユリアさんが誇らしげにユフェライラ様に向かって言い放つ。
「ばかなっ!アマリアとシルキーの接点はなかったはずっ!昨日今日会ったばかりでそのような関係になどなるはずがないわっ!」
ユフェライラ様は激昂したかのように声を張り上げて取り乱す。
そこには優雅な妾妃の面影は一つもなかった。
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