42 / 76
42
しおりを挟む「この忌々しい結界を解いてちょうだい。私のシルキー様に触れられないじゃない。」
アンナライラ嬢は顔をしかめて私を睨みつける。
私も負けじとアンナライラ嬢を睨みつける。
アンナライラ嬢みたいに不純な動機でシルキー様に触れて欲しくない。シルキー様を欲しがってほしくない。
「私が結界を張ったわけじゃないわ。誰だかわからないけど、シルキー様を守るのにはちょうどいいわね。」
誰が結界を張ったのかわからないけれど、アンナライラ嬢からシルキー様を守るのにはこの結界が必要だ。
アンナライラ嬢にはシルキー様を渡したくはない。
きっとアンナライラ嬢はシルキー様のことを物のように扱うことだろう。それだけは絶対に許すことができない。
「どこまでも忌々しい女ねっ!」
アンナライラ様の真っ黒な魔力が結界の中で膨れ上がる。
そして、私に向かって練り上げた魔力を放とうとする。
この結界はどれくらい頑丈なものなのだろうか。あのままアンナライラ様が攻撃魔法を私に向かって放ったとしたら、ユリアさんやシルキー様、それにこの保護猫施設で暮らしている猫様たちに被害が出るのではないかと不安になる。
「やめてっ!!」
「うるさいっ!わたしの邪魔をしないでちょうだいっ!!」
私の叫び声に呼応するように金色の光が辺りを包みこむ。それと同時にアンナライラ嬢から真っ黒な魔力の塊が放たれた。
「きゃああああああああああっ!!!」
響き渡った女性の悲鳴は誰のものなのか。
ギュッと目を閉じてしまっていたためすぐには判別がつかない。
猫様たちは無事なのだろうか。
シルキー様のことが、猫様たちのことが心配になって恐る恐る目を開ける。
「いやぁあああああああああっ!!!やめてぇぇええええええっ!!」
女性の悲鳴はまだ続いている。
目を凝らして良く見ると、金色の光に閉じ込められたアンナライラ嬢を真っ黒な魔力が襲っている。
いや、アンナライラ嬢が私に向かって放った魔力が金色の結界に阻まれて、結界内で行き場を失って暴走していると言った方が正しいだろうか。
アンナライラ嬢の絶叫が響き渡る。
「マリアちゃん。結界を解いてはダメよ。あの魔力はとても危険だわ。結界を解いてしまったら、ここにいる猫たちが危ないわ。それに、下手をするとこの近くの人々も危ない。」
「……はい。わかっています。」
ユリアさんが私に念押ししてくる。
アンナライラ嬢の苦しむ姿を見ているのは辛い。でも、結界を解く方法はわからない。むしろ誰が結界を構築したのかもわからない。
それにもし私が結界を解けたとしても、このまま結界を解いてしまったら大変危険だということがわかる。私だけならいい。猫様たちに被害が行ってしまうことが一番怖い。
なにもできずに時間だけが過ぎていく。
しばらくすると、アンナライラ嬢の悲鳴が消えた。そして、結界内でぐったりと倒れこむアンナライラ嬢の姿が目に入った。
黒い魔力は金色の結界が浄化したのか、跡形もなく消えていた。
45
お気に入りに追加
2,231
あなたにおすすめの小説
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
大切なあのひとを失ったこと絶対許しません
にいるず
恋愛
公爵令嬢キャスリン・ダイモックは、王太子の思い人の命を脅かした罪状で、毒杯を飲んで死んだ。
はずだった。
目を開けると、いつものベッド。ここは天国?違う?
あれっ、私生きかえったの?しかも若返ってる?
でもどうしてこの世界にあの人はいないの?どうしてみんなあの人の事を覚えていないの?
私だけは、自分を犠牲にして助けてくれたあの人の事を忘れない。絶対に許すものか。こんな原因を作った人たちを。
貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。
もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」
隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。
「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」
三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。
ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。
妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。
本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。
随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。
拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
【第一章完結】半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜
侑子
恋愛
小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。
父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。
まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。
クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。
その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……?
私は王妃になりません! ~王子に婚約解消された公爵令嬢、街外れの魔道具店に就職する~
瑠美るみ子
恋愛
サリクスは王妃になるため幼少期から虐待紛いな教育をされ、過剰な躾に心を殺された少女だった。
だが彼女が十八歳になったとき、婚約者である第一王子から婚約解消を言い渡されてしまう。サリクスの代わりに妹のヘレナが結婚すると告げられた上、両親から「これからは自由に生きて欲しい」と勝手なことを言われる始末。
今までの人生はなんだったのかとサリクスは思わず自殺してしまうが、精霊達が精霊王に頼んだせいで生き返ってしまう。
好きに死ぬこともできないなんてと嘆くサリクスに、流石の精霊王も酷なことをしたと反省し、「弟子であるユーカリの様子を見にいってほしい」と彼女に仕事を与えた。
王国で有数の魔法使いであるユーカリの下で働いているうちに、サリクスは殺してきた己の心を取り戻していく。
一方で、サリクスが突然いなくなった公爵家では、両親が悲しみに暮れ、何としてでも見つけ出すとサリクスを探し始め……
*小説家になろう様にても掲載しています。*タイトル少し変えました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる