断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚

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「もうっ!!なんなのよ。この音は!!たかが保護猫施設なのになんで、私が入っただけでこんなにもけたたましい音が鳴り響くのよ!!セキュリティが厳しすぎるじゃない!!」

 シルキー様を正規の手順で手に入れられないのならば、無理矢理シルキー様を手に入れるしかない。私はそう思って夜の保護猫施設にこっそりと侵入した。

 私は聖なる力が使えるのだもの。保護猫施設に侵入することなんてとっても簡単なことだ。

 ただ、このけたたましい音には驚いた。まさかたかが保護猫施設なのにセキュリティが強固だなんて思ってもみなかったのだ。

「もうっ!!これじゃあ、シルキーを連れて行く前に私がみつかっちゃうじゃない!ゆっくりシルキーを探すつもりだったのにっ!!」

 私は苛立ちながら声を上げる。

 人が来る前にシルキーを探して連れ出さなきゃいけないという焦りから思わず声が大きくなってしまう。

 どうしてなのかしら?

 どうして、シルキーを手に入れるのがこんなに難しいのかしら?

 私はアンナライラなのよ。この世界のヒロインなんだから。

 この世界は私のものなのに、どうしてこんなにも上手くいかないのかしら。

「シルキー!どこなのよ。さっさと出てきなさい!!あなたのアンナライラが迎えに来ましたのよ!!」

 私は片っ端から見かけたドアを開けて室内をのぞき込みながら声を上げる。

 シルキーが私に気がつけば出てくるはずなのに。

 一つ一つドアを開けてシルキーの名を呼ぶが、シルキーは一向に見つからない。

 ……おかしい。どうしてなのかしら?

「シルキー!シルキー!!この私、アンナライラがわざわざシルキーを迎えに来たのよ!!さっさと出てきてちょうだい!!なんで私の手を煩わせるのかしら!」

 なかなかシルキーの姿が見つからない。それどころか、保護猫施設だというのに猫一匹見つからない。

「なんでいないのよ?なんで出てこないのよ!」

 私は苛立ちながら声を張り上げた。

「……アンナライラ嬢。不法侵入よ。犯罪だわ。」

「あら。学園を追放されて平民になったアマリアじゃないの。あなたこんなところにいたのね。」

 私に話しかける声に気づき、声がした方を見るとそこには学園を追放されたアマリアがいた。

 そして、私はある事実に気がつく。

「あんたね!あんたがここにいるからシルキーが私の手に入らないのね!!」

 そうだ。きっと、そうだ。

 アマリアは追放されたのだ。ここに居て良いはずがない。

 シルキーの側にアマリアがいるのはシナリオ上おかしなことなのだ。

 アマリアはバグだ。

 きっとアマリアをなんとかしないと、永遠に私はシルキーを手に入れることができない。

 私は永遠にこの世界のヒロインになることができないのだ。

 アマリアがいるから。

 すべてはアマリアがいるから。

 アマリアがいるからいけないんだ。

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