断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚

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 私はシルキー。猫である。
 
 可愛らしく愛らしく優雅な猫である。
 
 見よ。このまっすぐに伸びた長い尻尾を。私の自慢の尻尾である。
 
 尻尾をゆらゆらと動かすのが私はとっても好きだ。見ていて飽きないほど優雅な動きに見えるからだ。
 
 高貴な私にとっても相応しい尻尾だと思わないか?
 
 ふふふ。この私の美しい尻尾に、私のマリアもすっかり魅了されているようだ。私が尻尾を優雅に揺らすとマリアの目がより一層輝くのだ。
 
 マリアは良い。
 
 とても良い。
 
 私のことを崇拝してくれるその目がとても心地よい。優しく触れてくるその手の暖かさも気に入っている。
 
 できれば私のことだけを見ていてほしいが、マリアは他の猫たちにも熱のこもった目を向ける。
 
 できれば私のことだけを見ていて欲しいのに。私だけのものだったらいいのに。



☆☆☆☆☆



 マリアは今日はここに泊るらしい。
 
 マリアが大好きな猫たちがここにはいっぱいいる。
 
 きっと、今日はマリアのベッドに皆で押しかけることだろう。
 
 マリアの笑みはぽかぽかな太陽みたいで大好きだ。僕まで元気がでてくる。
 
 マリアが来る日はとても嬉しい。
 
 マリアが触れてくれるととっても嬉しい。
 
 マリアのしてくれるマッサージはとっても気持ちがいい。
 
 大好きなマリア。可愛いマリア。
 
 マリアのこと僕は大好き。
 
 

☆☆☆☆☆


 ……ちっ。
 
 マリアが泊るっていうから逃げだしたら、伯母に捕まった。
 
 強制的に魔法で身体の自由を奪いやがって。
 
 しかも、マリアと一緒にシャワーを浴びろだって!!
 
 そんなこと出来るわけがないじゃないかっ!!
 
 まったく伯母にはあきれてものが言えない。
 
 いや、実際にオレは喋れないんだけど。
 
 そういうわけじゃなくって。
 
 ……別にマリアのことが嫌いってわけじゃない。
 
 オレが一番苦手なのは伯母だ。あれは悪魔だ。
 
 それに比べればマリアは天使のように思える。まあ、伯母と比べたら、だけど。


☆☆☆☆☆

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