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「王様と王妃様に会いたいの。会わせてちょうだい。」

 アンナライラは王城の門まで怒りの勢いに任せて来たが、門番に中に入るのを止められた。
 
 アンナライラはにっこり笑いながら門番に頼むが、もちろんイエスというはずがない。
 
「申し訳ございません。謁見のお約束がない方にはお会いすることができません。まずは、あちらで謁見の申請をしてはいかがでしょうか。」

「そうなの?でも、私は急いで王様と王妃様にお会いしたいの。ね?お願い?」

 アンナライラは目に涙を溜めて、門番を上目遣いで見つめる。
 
「あ……うぅ。困ったなぁ。」

 門番はアンナライラの可愛さにうっかり職務を忘れて門を通したくなる。

「おい!仕事なんだ!約束もない誰かもわからない人物を王宮に入れるわけにはいかないだろう。」

 アンナライラに魅了された門番Aは困った表情を浮かべたが、その様子を見ていた門番Bがアンナライラに待ったをかけた。
 
「まあ。私はユースフェリア様の婚約者のアンナライラ・ナンクルナーイですわ。」

 アンナライラはにっこり笑いながら自己紹介する。

「……アンナライラ・ナンクルナーイ嬢ですか?」

「ユースフェリア殿下の婚約者はアマリア侯爵令嬢だと聞いていたが……。どういうことだ?」

 門番Aと門番Bは互いに困惑したように顔を見合わせた。
 
 ユースフェリアとアマリアの婚約が破棄されたということはまだ王宮に務めている者でもごく一部の者しか知らされていないのだ。
 
 そして、アンナライラはまだユースフェリアと婚約をしていない。そのため、門番たちはユースフェリアの婚約者という言葉に首を傾げたのだった。
 
「アンナライラは私を呪ったから、ユースフェリア様の婚約者には相応しくないとして婚約を破棄されたのよ。王様から聞かされていないのかしら?私がユースフェリア様の婚約者に決まったことも知らされていないだなんて……。もういいわ。ユースフェリア様を呼んでくださる?ユースフェリア様なら私がユースフェリア様の婚約者だって知っていますもの。」

 門番とこれ以上言い合っても仕方がないと思ったアンナライラはユースフェリアを呼んでもらうことにした。一国の王子を呼び出すのが不敬にあたると思っていないアンナライラだった。

「……なんだか、この女性は魅力的だが、ユースフェリア殿下のことをなんだと思っているんだ?」

「ああ。ユースフェリア殿下を呼び出すとか正気じゃない。」

「そういやぁ、ナンクルナーイって家名は男爵家、だよな?」

「ああ。そういや男爵家にそんな家名あったな。ユースフェリア殿下の婚約者になれる身分なのか?」

 門番たちはアンナライラへの返答に困り、二人は顔を見合わせながらコソコソと話し合う。

「ああ。アンナライラ来ていたのか。」

 そこに、王宮の門にピンク色の髪の女性がいるという騒ぎを聞きつけてもしやアンナライラでは?と思ったユースフェリアがやってきた。

「ねえ、ユースフェリア様ぁ。私、王様と王妃様にお会いしたいの。お会いできるようにお願い出来ないかしら?」

 アンナライラは嬉しそうにユースフェリアに抱きつき耳元で囁くようにお願いする。

「あ、ああ。アンナライラ……。父上と義母上の元に案内するよ。」

 ユースフェリアは熱に浮かされたような目をしてアンナライラのお願いに答えた。

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