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しおりを挟む「お義父様はあてにならないわ。お義母様からお義父様に言ってもらおうからし。お義父様はお義母様には頭が上がらないようだし。それに、シルキーを家に迎え入れられれば私はこの国の王妃にもなれるんだもの。お義母様だって喜ぶはずだわ。」
アンナライラはナンクルナーイ男爵を説得できなかったので、今度はナンクルナーイ男爵夫人を頼ることにした。
「お義母様。お願いがございます。」
「あら。アンナライラどうしたのかしら?」
ナンクルナーイ男爵夫人はにこやかにアンナライラに上品に微笑みかける。その所作はとても美しく、男爵家に嫁ぐ前は伯爵令嬢だったこともあり教育が行き届いているように見受けられる。
「保護猫施設からシルキーを渡せないって連絡があったんですの。お義父様はそれを素直に受け入れたんですわ。私はシルキーが欲しいのに。お義母様からもお義父様に言ってください。シルキーをどうしてもお迎えしたいと。」
ナンクルナーイ男爵夫人はアンナライラに向かってニッコリと微笑んでから首を傾げた。
「アンナライラはそのシルキーという名前の猫にお会いしたことはあるのかしら?」
「いえ。ないわ!でも、シルキーは私のものよ!」
「そう。なぜお会いしたこともないのに、アンナライラはシルキーという猫にこだわっているのかしら?」
「シルキーは私が王妃になるのに必要な猫なのよ。だから絶対にシルキーが欲しいの。ねえ、お義母様。お願いだからお義父様を説得してちょうだい。」
アンナライラの訴えにナンクルナーイ男爵夫人は笑みを浮かべたまま答える。
「アンナライラは王妃になりたいのね。向上心があってとても良いことだと思うわ。でも、王妃になるにはそれ相応の知性と教養が必要よ。まずはシルキーという猫の前に、アンナライラに対する教育が必要だと私は考えているわ。ねえ、アンナライラ。王妃になるために必要な教育を受けましょうか?」
「えっ!?」
アンナライラはナンクルナーイ男爵夫人の言葉に目を瞠った。アンナライラはナンクルナーイ男爵夫人のことを見誤ったのだ。伯爵家から男爵家に嫁ぎ身分が低くなったことを良く思っていないと思い込んでいたのだ。
ナンクルナーイ男爵夫人のことをアンナライラは身分に固執する女性だと思っていた。だから、アンナライラが王妃になると言ったら全力でシルキーを迎え入れるために動いてくれると思っていた。
「王妃になりたいのでしょう?今のアンナライラではとてもではないけれど、王妃になれる器ではないわ。」
「そ、そんなことないわ!シルキーを手にいれれば無条件で私は王妃になれるのよ!教育なんて受けなくてもいいの!シルキーさえ手に入れれば!!」
アンナライラはナンクルナーイ男爵夫人の言葉に混乱して声を荒げる。
「……アンナライラ。王妃として相応しい教養を身に着けるのが先よ。」
ナンクルナーイ男爵夫人は笑みを崩さないまま告げた。
「嫌よ!教育を受けるなんていや!!勉強なんて嫌いだわ!シルキーさえ手にいれれば私は王妃になれるんだもの!」
アンナライラは教育を受けるのは嫌だとナンクルナーイ男爵夫人の部屋を飛び出した。
「シルキーさえ手に入れればいいのよ。そうすれば私は王妃になれる。王妃になれるの。お義父様もお義母様もあてにならないわ。私がこの手でシルキーを手にいれればいいのよ。」
アンナライラは怒りにまかせて家を飛び出したのだった。
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