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「あれ?そういえばシルキー様のお姿が見えませんが……。」

 ブチがそばによってきたのが嬉しくて、いつも保護猫施設に来てからすぐにシルキー様を探すのだがそれがおろそかになってしまっていた。

 もしかして、シルキー様がヤキモチを焼いてくださって隠れてしまったのかしら?と不安になる。

 猫様はとってもヤキモチ焼きな子が多いと、この保護猫施設に来てから知った。

「ああ、そうそう。私、そのことで今日はここに来たのよ。実はね、シルキーは男爵家のお家でトライアルが始まるの。だからその前に健康チェックをしているのよ。」

 ナーガさんはそう言って困ったように笑った。私がシルキーが一番のお気に入りの猫様だと知っているからだろう。

 本当は私がシルキー様を迎え入れたかった。

 だけれども、お父様もお母様も侯爵家には雑種の猫は相応しくないとおっしゃってむなしくも却下されてしまったのだ。

「……そう。シルキー様には家族がみつかったのね。」

 私は寂しくなった。

 里親が見つかることはとても素晴らしいことなのに、大好きなシルキー様と離れるのが辛い。

「ええ……。まだトライアル段階よ。正式譲渡ではないわ。」

「でも……。シルキー様はとっても素敵な猫様ですわ。シルキー様のことを気に入らない人なんておりません。あの高貴なお姿に、優雅な立ち居振る舞い。とてもとても魅力的な猫様ですわ。」

 シルキー様のことを気に入らない人はいないと正直思う。だから、きっとシルキー様はこのまま正式に男爵家に譲渡されるだろう。

「あの……ちなみに里親になられる男爵様にはお会いされたのでしょうか?」

 貴族が猫様を引き取る時、一緒に来ることは少ない。使用人が来ることの方が多い。

「ええ。とっても優しそうな男爵様でした。男爵夫人も人柄の良さそうな笑みを浮かべておりましたよ。」

「そう。よかったわ。」

 願わくばシルキー様が何不自由なく幸せに暮らせますように、と私は願った。

「あの、男爵様のお名前は……?」

 どこの男爵家にシルキー様は迎え入れられることになるのだろうか。

 私はせめてそれだけでも知りたくてナーガさんに尋ねた。

「ナンクルナーイ男爵家よ。」

 ナンクルナーイ男爵家……?

 それって……アンナライラの家じゃないの?

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