魔族の花嫁に選ばれた皇太子妃

葉柚

文字の大きさ
上 下
18 / 29

18

しおりを挟む





「愛しい愛しい王子に会えたか?」

「……会えたわ。ロイド殿下は私だって気づかなかったみたいだけれど。」

 夜明け前、約束通りに私はカルシファーの元へと戻った。
 約束を違えてしまえば、私は泡となって消えてしまう。
 まだやり残したことがあるので、今はまだ泡となって消えてしまうことはできない。
 だから、私はカルシファーとの約束を守っている。
 
「そうか。で、あの約束のことは覚えているか?」

「……もちろん覚えているわ。」

 カルシファーの言う約束とは、夜明け前にカルシファーの元に戻るという約束ではない。
 もう一つ、私はロイド殿下に会いに行くためにカルシファーと約束……もとい取引をおこなった。
 私としては祖国を裏切るような感じがしてとても抵抗感があるが、それでも、ロイド殿下に会いに行くためにはカルシファーと取り引きをしなければならなかった。
 それに、カルシファーと取り引きをすることで、私がなぜ神の意に反して魔族の花嫁となったのかわかるのではないか、調査することができるからだ。
 カルシファーと私の利害は一致している。そのためのカルシファーとの取引だ。
 まあ、私の方が分が悪いような気はしているが。
 
「そうか。では、なにかつかめたか?」

「いいえ。昨夜はロイド殿下に会っただけでなんの収穫もなかったわ。」

「そうか。あんまりゆっくりしていてもいいことはないぞ?」

「……わかっているわ。私を条件付きとは言え、ロイド殿下の元に行かせてくれたんですもの。あなたとの約束は守るわ。」

「そうか。なら、いい。」

 カルシファーはぶっきらぼうにそう言うと私に背を向けた。
 私は去っていくカルシファーの背中をただただ見送った。
 私はカルシファーが何を考えているのかよくわからない。私を再びロイド殿下に合わせてくれたのは感謝しているが、カルシファーは魔族だ。
 簡単にカルシファーのことを信じてはいけない。
 カルシファーは見た目は人間に似ているとはいえ、魔族なのだから。
 人間よりも力も魔力も持った魔族なのだから。
 





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

【完結】ある二人の皇女

つくも茄子
ファンタジー
美しき姉妹の皇女がいた。 姉は物静か淑やかな美女、妹は勝気で闊達な美女。 成長した二人は同じ夫・皇太子に嫁ぐ。 最初に嫁いだ姉であったが、皇后になったのは妹。 何故か? それは夫が皇帝に即位する前に姉が亡くなったからである。 皇后には息子が一人いた。 ライバルは亡き姉の忘れ形見の皇子。 不穏な空気が漂う中で謀反が起こる。 我が子に隠された秘密を皇后が知るのは全てが終わった時であった。 他のサイトにも公開中。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

虐げられた皇女は父の愛人とその娘に復讐する

ましゅぺちーの
恋愛
大陸一の大国ライドーン帝国の皇帝が崩御した。 その皇帝の子供である第一皇女シャーロットはこの時をずっと待っていた。 シャーロットの母親は今は亡き皇后陛下で皇帝とは政略結婚だった。 皇帝は皇后を蔑ろにし身分の低い女を愛妾として囲った。 やがてその愛妾には子供が生まれた。それが第二皇女プリシラである。 愛妾は皇帝の寵愛を笠に着てやりたい放題でプリシラも両親に甘やかされて我儘に育った。 今までは皇帝の寵愛があったからこそ好きにさせていたが、これからはそうもいかない。 シャーロットは愛妾とプリシラに対する復讐を実行に移す― 一部タイトルを変更しました。

【完結】「別れようって言っただけなのに。」そう言われましてももう遅いですよ。

まりぃべる
恋愛
「俺たちもう終わりだ。別れよう。」 そう言われたので、その通りにしたまでですが何か? 自分の言葉には、責任を持たなければいけませんわよ。 ☆★ 感想を下さった方ありがとうございますm(__)m とても、嬉しいです。

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

【完結80万pt感謝】不貞をしても婚約破棄されたくない美男子たちはどうするべきなのか?

宇水涼麻
恋愛
高位貴族令息である三人の美男子たちは学園内で一人の男爵令嬢に侍っている。 そんな彼らが卒業式の前日に家に戻ると父親から衝撃的な話をされた。 婚約者から婚約を破棄され、第一後継者から降ろされるというのだ。 彼らは慌てて学園へ戻り、学生寮の食堂内で各々の婚約者を探す。 婚約者を前に彼らはどうするのだろうか? 短編になる予定です。 たくさんのご感想をいただきましてありがとうございます! 【ネタバレ】マークをつけ忘れているものがあります。 ご感想をお読みになる時にはお気をつけください。すみません。

処理中です...