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「……なんだか、とても怪しいですね。その人たち。」

 僕は素直な感想を言った。

 ここで何も言わずにギルドの外に出て行くのはあまりにも不自然だったからだ。金貨100万枚に心引かれない者はいないだろう。

「そうだな。碌な奴らじゃあなさそうだ。女の子一人に金貨100万枚だぞ?絶対になにかしら裏があるだろう。珍しい見た目の少女を御貴族様に売るような奴らかもしれん。見つからないといいな。その女の子。」

「まっとうな人はそう思うでしょうね。ですが、冒険者の中には金貨100万枚を手にいれようと息巻いている人も大勢います。でも、いくら珍しい容姿をしているとしたって、金貨100万枚なんて怪しすぎなんですよね。僕たちすっごく怪しいです。って言ってまわっているようなもんですよ。」

 ルイーズアンさんとモリスさんが困ったような顔をしながら相づちを打つ。

 よかった。ミコトのことがバレても味方になってくれそうな人は何人かはいそうだ。だが、いざミコトを目の前にしてしまうと金貨100万枚という大金に目がくらんでしまう人がいるかもしれない。

 そう思うとミコトのことはこのまま誰にも言わずに黙っておく方がいいと思った。ルイーズアンさんもモリスさんも親切そうな人たちだが、今日会ったばかりの人たちだし警戒しておくべきだろう。

「……なんだか、関わりにならない方がいいみたいですね。」

「そうだな。気にしない方が良い。下手に絡むと面倒なことになるぞ。」

「そうします。」

 僕たちは下手に白服の男たちと関わらないように決めた。と言っても、白服の男たちが探していると思われるミコトがここにいるのだから、いずれ必然的に会ってしまうことになるかもしれないが。

 だが、少なくともミコトの魔法の効果が効いている1年間は大丈夫だろう。なにせ、目立つ白い髪も、赤い目も魔法で変えているのだから。

 白い髪と赤い目を持つ少女を探そうとしている冒険者たちの視線に嫌な感じを覚えながらも、ここで逃げるように外にでれば先ほど出て行ったという白服の男たちに会ってしまうかもしれない。

 それならば、もう少しだけ冒険者ギルドにとどまっていた方がいいかもしれない。

 そう思って僕たちは、依頼が貼り付けられているボードに向かった。

「……今、外に出ると白服の男たちがそばにいるかもしれない。なにか良さげな依頼がないか見てから外にでよう。」

「そうね。それがいいわね。」

「アルフレッド、異議なし。」

 僕の提案にロレインちゃんもミコトも頷いた。

「……魔物の討伐依頼が多いわねぇ。しかもAランク?」

「ほんとだね。Fランクの依頼は採取依頼ばかりだ。しかも、あまり多くない。」

「不思議よね。高レベルの魔物ばかりだなんて。それも、どれも国境付近だわ。」

「……そう言われれば。なんだか、ちょっとおかしな感じだね。採取依頼はまあ、普通かな?」

「そうね。採取依頼は……私は採取対象の素材がなにに使われるのかわからないからなんとも言えないけれど……。」

「僕もそこまで詳しくありませんが……、回復薬の材料ばかりな気がします。初級から上級まで作れそうですよね。」

「アルフレッド、わからない。」

 僕とロレインちゃんの会話にミコトはついていけなかったようだ。つまらなそうな顔をしている。

「ごめんごめん。ニッコリ草の依頼はないみたいだね。」

「そうね。このコドランマリン草の採取依頼が多いみたいだけど、コドランマリン草はシヴァルツくんの家の庭にあるの?1束銀貨3枚よ?」

 ロレインちゃんが依頼票の一つを指さす。

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