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 宿に部屋を取るにしても手持ちのお金では宿代が足りないので、先に薬草を売ることにした。

 薬草を売るには冒険者ギルドで買い取ってもらうか、薬草を必要としている薬師に売るか、薬草を取扱っている商人に買い取ってもらうかの三択だ。

 正直、薬草の適正価格を知らない僕たちは相手の恰好のカモになることは間違いない。

 というわけで、加工した薬草は一度に売らずに販売相手を変えながら少しずつ売って行くことにした。

 まず最初に目を付けたのはラルルラータの町に入ったところにこじんまりとした店を構えている薬屋だ。シンプルながらも清潔な佇まいが正統な薬屋として繁盛してそうな感じがした。

 こういうところなら、正規の値段で買い取ってもらえるのではないかと思ったのだ。

「こんにちはー。」

「こんにちは。」

「アルフレッド、来た。」

 できるだけ好印象を持ってもらえるようににこやかに挨拶をする。

 ミコトはここではアルフレッドと名乗っている。

「ああ。いらっしゃい。」

 僕たちを待っていたのは白髪の優しそうなお婆さんだった。

「子供たちだけで珍しいね。どうかしたのかい?」

「えっと、薬草を買い取っていただけないかと思いまして……。」

 僕は鞄から加工した薬草の束を三束取り出して、お婆さんに見えるようにカウンターに置いた。

「そうかいそうかい。でも、薬草はただ採取すればいいってわけじゃないからね。葉っぱが必要だったり、根が必要だったり。薬草の種類によっても異なる。だからあなた達が持ってきた薬草を必ず買い取れるわけじゃないってことは理解しておいてちょうだい。じゃあ、持ってきた薬草を見せてもらうよ。」

 お婆さんは前置きをしてから、僕たちが採取して加工した薬草を手に取った。そして、大きく目を見開く。

「こ、これは……。」

「あ、あの……。どうしたんですか?」

 お婆さんの驚きようにどうしたのだろうかと心配になる。加工の方法が間違っていたのか。それとも、僕が薬草だと思っていたのはそもそも一般的な薬草ではなかったのだろうか。

 なんだか、手のひらに汗をかいてきてしまった。べたべたして気持ちが悪い。

 喉も乾いてきてしまった。

 悪いことをしているわけじゃないのに、薬草を買い取ってもらうなんて初めてのことだから緊張してしまう。
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