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「……薬草を採取したはいいけど、いくらぐらいになるんだろう?ロレインちゃん、薬草の値段って知ってる?」

 僕は加工した薬草を見ながらロレインちゃんに聞いてみる。

 僕は薬草の採取と加工はしたことがあるが、薬草を買い取ってもらったことは一度もないのだ。

 町に行くと忌み子だって言われてまともに取り合ってもらえないから。いつも薬草の売買はじいちゃんがしていたんだ。そのじいちゃんに販売価格を教えてもらっていないのだから、僕が薬草を売ったところで実はいくらになるのか見当もつかないのだ。

「……ごめんなさい。私も薬草の売買には詳しくないの。薬草を使って作られた薬を買ったことはあるけれど、材料になっている薬草の種類も知らないし、どのくらいの値段で薬草を仕入れているかも知らないわ。それに、これらが薬草だってことをシヴァルツくんから教えてもらうまで全然知らなかったくらいだし……。」

 ロレインちゃんは申し訳なさそうに答えた。

 まあ、確かに考えてみれば普通の人が薬草についての知識を持っていることはあまりないだろう。ロレインちゃんが知らないのも仕方のないことだ。

「ううん。ありがとう。この薬草でしばらく宿代が浮けばいいんだけど……。」

「そうねぇ。ちょっと不安よね。ラルルラータの町付近で魔物でも仕留める?魔物の肉だったらいくらくらいになるか目安がわかるわ。と言っても私が知っているのは町での魔物肉の販売価格くらいだけどね。」

「そうだね。それはいいかも。お金はいくらあってもいいし。」

「ミコト、頑張る。」

「あれ?でも、解体はどうするの?魔物一匹持って歩くのは大変だよ?」

「そ、そうね……。そう言えば私、解体したことないわ。」

「ミコト、解体、ない。」

「僕も無いよ。」

 良い案だとは思ったが、魔物を倒しても解体したことは誰もなかった。

 僕も倒した魔物はじいちゃんがどうにかしていたから気にしたこともなかったというのが事実だ。

 じいちゃんに教わっておけばよかったなぁ。魔物の解体方法。

 冒険者になれば、魔物を解体して素材集めたり売ったりして生活しなきゃならなかったのに。僕としたことがうっかりしていた。

「……魔物の件は、薬草の買い取り金額次第にしましょうか。」

「そうだね。」

「ミコト、わかった。」

 そういうことになった。

 そんな話をしているうちに、ラルルラータの町の門が見えてきた。

 ちなみに僕たちの町からラルルラータの町に着くまで魔物には一切で合わなかった。きっとミコトがいるからだろう。そもそも魔物が出てこないんだから、魔物を討伐して解体しようだなんて無理な話だった。

 
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