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「……ラルルラータの町で働くしかないわねぇ。手持ちの何かを売るにしても私の持ち物はすべて燃えてしまったし。やっぱり働くしかないと思うわ。でも、働くにはラルルラータで泊るための部屋が必要だわ。それに、すぐに働く場所が見つかるかはわからないし……。」

「そうだね。ロレインちゃんの知り合いでもラルルラータにいればよかったけど……。僕たちの町のことを皆忘れてしまっているようだし、ロレインちゃんのこともきっと……。」

「そうね。私のことを忘れるというより、私たちの町のことを知っていて、私たちの町の誰かと親しかった人はいなくなってしまっているみたいだし……。」

 事実、ロレインちゃんの知り合いは存在しないことになっていた。

「ここにいても、お金は手に入らないし。食事だって、毎回食料をラルルラータまで買いに行くのは日数もかかるし、不便だよね。やっぱりラルルラータである程度生計を立てるのが妥当だよね。」

「そうね。シヴァルツくんのおじいさんにはラルルラータにいると書置きを残しておきましょう。ああ、ラルルラータでの逗留先を決めておけばよかったわねぇ。」

「それは大丈夫だよ。ラルルラータの町の冒険者ギルドにじいちゃんが来たら教えてほしいって僕たちの連絡先教えておけばいいよ。じいちゃんは冒険者だし。冒険者ギルドには詳しいよ。それに、書置きにも冒険者ギルドを訪ねてって書いておくよ。」

「そうね。それがいいわ。冒険者ギルドなら安心ね。」

 そうして僕たちはラルルラータにもう一度向かうことになった。だけれども、今度はお金の問題が再浮上する。

「でも……ラルルラータでまずは宿を取らないといけないわ。それにすぐに就職先が決まるかはわからないし。就職が決まるまでの金策はないかしら……。」

「そうだよね……。それなら、どこかで薬草でも採取しようか。少しくらいのお金の足しにはなると思うんだ。」

「そうね。薬草の採取なら危なくないし……。と、言ってもミコトちゃんがいるなら危険な魔物は近寄ってこないだろうから安心だけど。」

「ははは。確かに。ミコトはほんとすごいよ。」

「ミコト、すごい?すごい。すごい。」

 僕とロレインちゃんがミコトを褒めるとミコトは嬉しそうに笑った。

 そうして、僕たちはじいちゃんの家の周りにある薬草を採取し、じいちゃんに教わった製法で薬草を日持ちがするように加工した。

 きっと、これでラルルラータの町で仕事が見つかるまでの間の宿代の足しになると信じて。

 

 

 

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