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しおりを挟むラルルラータの町には宿屋が2軒あった。
一つはとても大きく豪華な宿屋、一つは質素な木造の宿屋。
どちらも繁盛しているようだ。まあ、客層は全然違うようだが。
豪華な宿屋は裕福な人たちが主な利用客のようだ。身なりの良い人が多い。
逆に質素な宿屋は冒険者が多いようだ。装備品を見れば冒険者かどうかは判別がつく。
ロレインちゃんやまだ子供のミコトがいるから冒険者が多くいる質素な宿屋ではなく、豪華な宿屋にしたいところだが、あいにくそんなお金はない。
ロレインちゃんとミコトの洋服を買ったり、食料を買い込んだりしたお陰でお金は金貨1枚と銀貨8枚、銅貨2枚だ。贅沢を出来る金額ではない。
「あっちの宿屋でいいかな?」
僕は質素な宿屋を指さして言う。
「もちろん。いいわよ。」
「ミコト、問題ない。」
ロレインちゃんもミコトも二つ返事で頷いた。
「ありがとう。ごめんね。本当はむこうの豪華な宿屋の方がいいよね。」
「気にしないで。……というより、私は金目の物全部燃えちゃって何も持ってないし。今の私はシヴァルツくんのお金をあてにするしかない残念な女よ?シヴァルツくんより年上なのになさけないわ。」
ロレインちゃんは申し訳なさそうに言った。
でも、それはロレインちゃんが悪いことではない。僕たちの町を焼き払った人が悪いのだ。ロレインちゃんが自分を責めることではない。
「シヴァ、いる。問題ない。」
ミコトは、僕がいるところなら問題ないということらしい。どうやら僕はずいぶんミコトに信頼されているようだ。素直に嬉しいと思う。
まるで、小動物に懐かれた時のようだ。
「二人ともありがとう。じゃあ、いこうか。」
「ええ。」
「ミコト、わかった。」
そうして、僕たちは質素な宿屋に向かった。
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