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「……朝になっちゃった。爺ちゃん……。」

 爺ちゃんが帰ってこないまま、夜が明けてしまった。

 爺ちゃんになにかあったのだろうか。

 爺ちゃんが約束を違えることなんて今までなかった。だから余計に心配になってしまう。

 爺ちゃんはああ見えても森の中で魔獣に囲まれて暮らしているのだ。そこらの町人に比べると強い。年を取っていても、まだまだ強い部類に入るはずだ。

 そんな爺ちゃんが夜が明けても帰ってこない。すぐにでも家を飛び出して町に行って爺ちゃんを探したいところだ。

 多分、僕一人だったならすぐに町に行っていた。でも、今の僕は一人じゃない。ミコトがいる。ミコトを守らなければならない。

 このまま爺ちゃんを探しに行くか。ミコトと一緒にこの家で待っているか。

 爺ちゃんを探しに行くのなら、ミコトを一人でこの家に置いておくのは危険を伴う。いくら魔物避けの植物が植えてあると言っても万全ではないのだ。かと言ってミコトを町まで一緒に連れて行くのもリスクを伴う。僕は町の人たちに忌み嫌われているのだ。そんな僕と一緒にいたらミコトまで危険な目にあうかもしれない。それに、もしかしたらミコトに対する追手がいるかもしれないのだ。これに関してはミコトに関する情報がなにもないので、なんとも言えないけれど。

 爺ちゃんはとても強い。僕なんかが太刀打ちできないくらいに強い。冒険者よりも強いんじゃないかって思うこともあるほどだ。そんな爺ちゃんが約束の時間までに戻らなかったということは、爺ちゃんに何かあったと考えるのが妥当かもしれない。このまま待っていても何も進展しないかもしれない。

 どうしよう。

 ミコトを残していくか、ミコトと一緒に行くか。

「……シヴァ、爺ちゃんいない。」

 家の中をうろうろと歩きながら考えていると、ミコトがやってきた。そして辺りを見回して、爺ちゃんがまだ帰ってきていないことに気づいてそう口にした。

「うん。まだ帰って来てないんだ。」

「そう。爺ちゃん、どうしたの?」

「……わからない。」

「そう。」

 ミコトは窓から外を見た。ミコトなりに爺ちゃんのことを心配してくれているのだろうか。

「ねぇ、ミコト。僕は爺ちゃんを探しに町に行ってみようと思うんだ。だけど、ミコトは危険だからこの家の中にいて。僕と爺ちゃん以外が訪ねてきても絶対外に出ちゃダメだよ。」

 やっぱり、爺ちゃんのことが心配だ。僕が町に行っても情報は得られないかもしれない。それでも、やっぱり家の中で待っているなんてことは出来なかった。爺ちゃんは僕のたった一人の家族なんだから。

 大事な家族なんだから。

 ミコトにはやっぱり家の中で待っていてもらうことにする。ミコトも目立つ容姿をしているし、町に出る方が危険かもしれない。それならばまだ家の中は安全だ。

「ミコト、わかった。家の中から出ない。」

「うん。ありがとう。ミコト。」

 ミコトは僕の言葉に素直に頷いた。

 

 

 

 

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