14 / 75
7 番外 わたしの世界
しおりを挟む番外 わたしの世界
◇◇◇◇◇
どこまでも真っ白な世界。
私がいた場所。
そして、私のいるべき場所。
私の帰るべき場場所。
壁も天井も真っ白。
外を見るための窓もない。
部屋の外へ出るためのドアも真っ白。
ドアにはいつも鍵がかかっていて、私は部屋から外にでたことは一度もない。
どのくらいの年月そこにいたのかわからない。
一人じゃない時もあった。
でも、一人の時もあった。
会話は最低限。挨拶はしない。
私と同じ人、何人もいた。
見た目も一緒。声も一緒。
違うのは部屋の中にいた年月。
私が一番長く部屋にいた。
一番最初から一人になるまで部屋にいた。
何人いたのかは興味がなかったので数えてはいない。でも、3人以上はいたと思う。
私たちはそれぞれ番号で呼ばれてた。
私は、サンプル001。
なぜ、私がそこにいたのかはわからない。
ただ、そこにいた。
そこでなにをしていた?
何もしていなかったと思う。
ただ漠然とそこにいただけ。
なにもせず、その場所にいることを強要されていただけ。
……違う。
私たちはその場所から出ようとは思わなかった。
なぜって?
そう作られたから。
誰に作られたかって?
わからない。知らない。
そんな会話はなかったから。
ただ毎日のように血を抜かれ、検査をされた。
脈をみられ、血圧を測られた。
視力を確認された。
聴力を確認された。
それが毎日続いた。
……毎日?
毎日だったのかもわからない。
だって、時を計る道具もなにもなかったから。
もしかしたら数日に一回だったのかもしれない。
もしかしたら一日に何回もだったのかもしれない。
夢も希望もない世界。
人格さえ不要な世界。
ただただ生かされているだけの世界。
それが私の知っていた世界。
でも、そこにあの人が来た。
それは私があの部屋に一人だけになったときだった。
あの人は私に少しずつ言葉を教えてくれた。
あの人が私に名前をくれた。
あの人だけが私を番号で呼ばなかった。
でも、私はあの人の名前を知らない。興味がなかったから。
そんな日々がどれくらい続いたのかはわからない。
数日だったのか、数ヶ月だったのか、数年だったのか。
そんな日々は、ある日あの人の手によって一変した。
ここに居てはいけないと、あの場所から連れ出されたからだ。
でも、私はいつかあの場所に帰らなければならない。
あの場所こそが私の存在理由そのものだから。
何があっても、あの場所に帰らなければならない。
なぜならば、私はそう作られたから。
私は、そう作られたから。
◇◇◇◇◇
0
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話
此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。
電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。
信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。
そうだ。西へ行こう。
西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。
ここで、ぼくらは名をあげる!
ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。
と、思ってた時期がぼくにもありました…
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移
龍央
ファンタジー
高校生紺野陸はある日の登校中、車に轢かれそうな女の子を助ける。
え?助けた女の子が神様?
しかもその神様に俺が助けられたの?
助かったのはいいけど、異世界に行く事になったって?
これが話に聞く異世界転移ってやつなの?
異世界生活……なんとか、なるのかなあ……?
なんとか異世界で生活してたら、今度は犬を助けたと思ったらドラゴン?
契約したらチート能力?
異世界で俺は何かをしたいとは思っていたけど、色々と盛り過ぎじゃないかな?
ちょっと待って、このドラゴン凄いモフモフじゃない?
平凡で何となく生きていたモフモフ好きな学生が異世界転移でドラゴンや神様とあれやこれやしていくお話し。
基本シリアス少な目、モフモフ成分有りで書いていこうと思います。
女性キャラが多いため、様々なご指摘があったので念のため、タグに【ハーレム?】を追加致しました。
9/18よりエルフの出るお話になりましたのでタグにエルフを追加致しました。
1話2800文字~3500文字以内で投稿させていただきます。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載させて頂いております。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる