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第87話
しおりを挟むクリスの身体がだんだんと大きくなっていく。そして、その大きさはいつの間にか成人男性ほど大きくなった。
「あっ……。こ、侯爵様っ!!?」
そして、クリスは私のよく見知った男性に姿を変えた。
「アンジェリカ……。私は……。」
クリスの姿から変化した侯爵様は私に近づきながら、そっと私に手を伸ばしてくる。
侯爵様の日焼けをしていない真っ白な腕が私の頬に添えられた。
目と目がくっついてしまうのではないかというほど、間近で見つめた侯爵様の瞳はクリスと同じ色をしている。どこか不安気な影をまとった瞳はクリスと全く一緒。
「あっ……。侯爵様。」
……クリスは、侯爵様だったの?
えっ!?
クリスが侯爵様っ!?
「こ、こうしゃくさまぁぁ~~~!!!?」
驚きすぎて声が裏返ってしまったのは仕方の無いことだと思う。
だって、私はクリスにあんなことやそんなこと……。もとい、抱きついたり身体をなで回したり、クリスの身体中にキスの雨を降らしたこともあった。
いやいやいや。
そんなの……。クリスが侯爵様だったなら、私はとんでもない痴女じゃないの。
今までクリスにしてきたことを思い返し、クリスの姿を侯爵様に変換してみて私は「きゃあ。」と悲鳴を上げる。穴があったら入りたい。そして二度と出てきたくない。
無理だ。無理無理。
どんな顔をして侯爵様に会えばいいというのだろうか。いや、目の前にいるけれども。目の前にいるけれども!!
「どうして。」という言葉が頭の中を駆け巡る。
整理できない。
全く整理できない。
クリスが侯爵様だったなんて信じられないし、信じたくない。
「……クリスは私の仮の姿だ。今まで黙っていてすまない。」
侯爵様がそう言って気まずそうに謝罪してくるが、そんなことは気にしていられないくらいに私は動揺してしまっていた。
衝撃的すぎて思考がまとまらない。
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