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第86話
しおりを挟む「……クリス?」
急に態度の変わったクリスに私はドキッとする。
もしかして、クリスは私に秘密を教えてくれる気になったのかしら。侯爵様の屋敷に戻る前に決意を固めてくれたのかしら。
でも、もしそうだとしたらクリスにだけ秘密を教えてもらうのはちょっと不公平よね。
なら私の秘密をクリスに話してしまいましょう。その方がクリスも少しは身構えなくてすむと思うし。
「あのね、クリス。私ね……。ずっとずっとクリスと結婚したかったの。それくらいクリスのことが好きなのよ。」
クリスのことが好き。今も変わらないくらいクリスのことが好き。
でも、気がついたら。
クリスと同じくらい好きな人ができていたみたい。
「……にゃあ。」
クリスは何を思っているのか。猫の表情の違いがわからない私にはわからない。
「でもね……。でも……私、クリスと同じくらい、侯爵様のことが……。」
ギュッと目を瞑って私の秘密をクリスに告げる。
私は自分でも気がつかないくらい自然に、いつの間にかクリスと同じくらい侯爵様のことが好きになってしまっていた。
さっき、ロザリーに侯爵様とキスをしたと言われて気がついた。
嫌じゃなかったのだ。恥ずかしいとは思ったけれど、侯爵様とキスをしてしまったことは全く嫌じゃなかったのだ。
クリスはまん丸な瞳を更に大きく見開いて私を見つめる。
クリスの耳と尻尾がピンッと天に向かって伸ばされる。
それから、徐々にクリスの身体がブレ始める。
……あれ?
クリスの身体がブレ始めた?え?なんで?なんでブレ始めるの?
え?クリス?
私の言葉がクリスに衝撃を与えたのだろうか。
それとも私の目がどうにかしてしまったのだろうか。
クリスの身体がブレ始めて、だんだんと大きくなっていっているような気がする。
そう、成人男性くらいの大きさに……。
「あっ……。クリス……?」
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