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第43話

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 それから私たちはヒースクリフさんが用意してくれた馬車に乗って侯爵邸に向かった。もちろん、クリスは私の膝の上でまどろみながら。

 侯爵邸に着いた私たちは侯爵邸の応接室に通された。

「どうぞ、お入りください。」

 私たちはヒースクリフさんの後を追う形で応接室内に入る。すると、ヒースクリフさんがソファーに座るように促してきた。

 促されるがまま、応接室のソファーに座ると、応接室のドアが外側からノックされた。

「軽食をお持ちいたしました。」

 そう言って入ってきたのはローゼリア嬢だった。ローゼリア嬢が運んできた軽食は2人分だった。美味しそうなフィンガーサンドイッチとクロデッドクリームの乗ったスコーンが見える。

「ああ、ありがとう。ここに置いてくれるかい?」

 ヒースクリフさんはそう言って、私の前に軽食セットを置くように告げた。ローゼリアさんはすぐに軽食セットを私の目の前に置いた。もう一つは一緒に来ていたロザリーの前におかれた。

 本来であれば使用人であるロザリーは貴族である私と一緒に食事をいただくことは出来ないのだが、一人で食べるのも嫌だったので、ロザリーには一緒に座ってもらったのだ。もちろん、ヒースクリフさんの許可は得ている。

「クリスのせいで二人とも朝食を召し上がってはいないのではないですか?どうぞ、よろしければお召し上がりください。」

 そう言ってヒースクリフさんはにっこりと微笑んだ。

「ありがとうございます。とても美味しそうですね。ヒースクリフさんはもう朝食をお召し上がりになったのでしょうか?」

「私のことは気にしないでください。どうぞ、お召し上がりください。」

「え、ええ。いただきますわ。とてもお腹が空いておりましたの。ですが、侯爵様にまずはご挨拶をさせていただきたいのですが……。侯爵様はいらっしゃらないのでしょうか?」

 美味しそうな軽食を前にして私のお腹が「ぐぅ~~っ。」と、音を鳴らした。それを気にしないふりをして、ヒースクリフさんに侯爵の居場所を尋ねる。

 今日は侯爵が初恋の人について教えてくれる予定になっているのだ。それなのに、軽食が先に出てきて侯爵が入ってくる気配がない。

「侯爵様は昼間は出てこられませんので、夜までこちらでお待ちください。」

「え?」

 ヒースクリフさんは衝撃的な内容を告げた。侯爵は夜まで姿を見せないというのだ。それであれば、なぜこんな早い時間帯に侯爵家に呼ばれたのだろうか。

「どうぞ、こちらでごゆっくりお過ごしください。」

 ヒースクリフさんはクリスの方をチラリと見ると、私に向かって有無を言わせないような笑顔で告げてきた。

 

 

 

 

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