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しおりを挟む「ふふっ。可愛いアリーチェ。混乱しているわよね。」
メリーチェがそう言って優しく微笑んだ。
確かに私は今、混乱をしている。
「あのね、アリーチェ。貴女と私の立場を交換しましょうと言っているの。」
「え?」
「私が男爵令息になって、アリーチェは侯爵令嬢になるのよ。それなら、貴女は私と結婚すれば育ての親も、産みの親も貴女の両親になるわ。」
メリーチェの言うことは理解できる。
理解はできるけれども、心が追い付かない。
私が、侯爵令嬢になる?
そして、メリーチェが男爵令息になる?
生活ががらりと変わってしまうではないか。
メリーチェはそれでいいのだろうか。
今までの生活が一変してしまうのに。
我が家は貧乏男爵家なのだ。
そんなところにメリーチェが住むの?
「メリーチェはそれでいいの?生活環境が一変してしまうわ。」
「構わないわ。私は元々侯爵家の養子なのよ。だから、元に戻るだけだわ。」
「うちは貧乏なのよ。今までのような生活はできないわ。」
「構わないわ。それでアリーチェが手に入るのならば苦にはならないわよ。」
「あーでも、アリーチェが侯爵令嬢になるのならば、私との婚約話が持ち上がるかもしれないな。」
メリーチェとの会話に割り込んできたのは、私たちを静観していたアルフレッド様だった。
「私としてはメリーチェと結婚したかったのだが。男に戻るということであれば私との結婚は国王が許さないだろう。今までだって、期間限定で私との婚約をおこなっているだけだったしな。そうなると国内で一番私の婚約者になる可能性が高いのは残念ながらアリーチェになる。」
「え?」
アルフレッド様の言葉は正直とても意外なものだった。
きっと、この世界に転生したんだと気づいた当初だったら、この結末には素直に喜んだだろう。
だって、憧れのアルフレッド様の婚約者になれるのだから。
だけれども、今はちょっと微妙な気持ちだ。
なぜならば、アルフレッド様のお心は今もメリーチェにあることがハッキリとわかっているからだ。
アルフレッド様はメリーチェの代わりに仕方なく私を選ぶだけ。
それがとても辛いものだった。
好きな人の心が私に向けられないのはとても虚しいだけだ。
それに、私は・・・この世界で生きてきて実際に気になってしまったのは、アルフレッド様ではなくメリーチェなのだ。
そのメリーチェが侯爵家から男爵家の養子になって言いとまで言ってくれて、私と婚約したいと言うのだ。
私は虚しい結婚生活よりも互いに心を通わせた結婚生活を送りたい。
「アルフレッド様。それはどうにかならないのですか?」
「ならんな。私に相応しい婚約者がアリーチェ以外に現れなければ無理だ。」
一難去ってまた一難。
「そんなもの。アルフレッド様の婚約者になりたいという方は大勢いらしゃいますよ。それに国内がダメならば国外という手もありますし。」
どうしようかと思っていると、メリーチェが手を差し伸べてくれた。
そうか、国外という手もある。
「・・・まあな。でも、私はメリーチェがいいんだよ。本当はね。だから、メリーチェに似ているアリーチェで妥協してもいいかと思ったんだけれども・・・。」
「ダメです。アリーチェは例えアルフレッド様であってもお渡しできませんわ。」
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