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しおりを挟む「おはよう。メリーチェ。今日も君は美しいね。」
校舎に入ってすぐにアルフレッド様がメリーチェに声をかけてきた。
婚約者なんだから当たり前なんだろうけど、私にとっては違和感バリバリだ。
だって、乙女ゲームではアルフレッド様は私と恋に落ちるはずなのに、現実のアルフレッド様はメリーチェのことばかりを気にかけているんだもの。
「おはようございます。アルフレッド様。」
笑顔を見せて挨拶をするメリーチェだが、その目は全く笑っておらず作った笑顔だということが私にもわかった。
そして、メリーチェはどこかアルフレッド様に対して冷たいようにも思える。
乙女ゲームの中のメリーチェはアルフレッドに対しては積極的だったのに。
「ああ。アリーチェもいたのか。おはよう。」
「おはようございます。アルフレッド様。」
まるでついでのように私にも挨拶をくれたアルフレッド様。
「メリーチェ。一緒に教室まで行かないか?」
「アリーチェと参りますので。」
アルフレッド様がメリーチェを誘うがメリーチェは相手にしないどころか、私と一緒に行くと言う。
そのお陰で今、アルフレッド様に私は睨まれてしまった。
「あの・・・私は一人でも大丈夫ですので、ぜひお二人で・・・。」
「そうか!さすがアリーチェはわかっているな。」
「アリーチェ・・・。私はアルフレッド様ではなく、アリーチェと一緒にいたいのです。」
アルフレッド様の視線が痛かったので、メリーチェにアルフレッド様と一緒にいるようにと言ったところ、メリーチェとアルフレッド様からは正反対の反応が返ってきた。
アルフレッド様は嬉しそうに答えたが、メリーチェはとても寂しそうに答えたのだ。
間に挟まれたのは私。
「えっと・・・では、三人で一緒に行くと言うのは・・・。」
「・・・メリーチェが一緒なら仕方がないな。」
「アリーチェが一緒なら仕方がありませんわね。」
こうして私たちは3人で仲良く教室まで行くことになったのだった。
その途中、もちろん私たちは好奇の視線にさらされることになる。
「まあ!貧乏男爵の娘が図々しくもアルフレッド様とメリーチェ様に取り入っているわ!」
「アルフレッド様を狙っているんじゃないの?」
「アルフレッド様とメリーチェ様の仲を壊そうとしているのではなくって。」
「恥知らずね。」
もちろん悪く言われているのは私である。
アルフレッド様を狙っているのは当たっている。
当たっているが当のアルフレッド様は私のことが眼中にないのだ。
アルフレッド様はメリーチェのことしか見ていないように思える。
そして、メリーチェは何故だか私をアルフレッド様避けに使っているような気がしてならない。
メリーチェはアルフレッド様のことが嫌いなのだろうか。
「あの・・・。みなさんの視線がいたいのですが。」
意を決して伝えてみれば、
「そうか、ならば私をメリーチェと二人きりにしてくれて構わない。むしろ、メリーチェと二人きりにしてくれると助かる。」
「まあ!アリーチェったら私を置いていくと言うんですの。ダメですわ。アルフレッド様と二人っきりになってしまうではありませんの。私はアルフレッド様ではなくってアリーチェと一緒にいたいんですの。」
「・・・メリーチェ。」
メリーチェの言い様にアルフレッド様はガックリと肩を落とした。
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