王太子が悪役令嬢ののろけ話ばかりするのでヒロインは困惑した

葉柚

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「ねえ、アリーチェ。私、貴女と友達になりたいわ。」

そうメリーチェに声をかけられたのは放課後、中庭でのことだった。

中庭に呼び出されたので、私はメリーチェに虐められるのではないかと身構えたが違った。

まあ、私が虐められるようなことなにもしていないし、乙女ゲームと違ってメリーチェって性格悪くないんだよね。不思議と。

気位は高いけどね。

まあ、侯爵令嬢なんだからこんなもんでしょ。って感じ。

「えっと。でも、メリーチェ様と私では身分が違いすぎます。」

まさか乙女ゲームの悪役令嬢とヒロインが手に手を取り合ってキャッキャウフフするわけにもいかないので、お断りしてみる。

「身分なんて気にしなくてもいいのよ・・・?」

すると少し寂し気に微笑むメリーチェの姿を見ることができた。

そんな寂し気な表情を見せられてしまうと強く断ることができない。

「私は気にしなくてもアルフレッド殿下が気になさるのでは・・・?」

アルフレッド様が身分で差別するような人ではないことは乙女ゲームの知識で知っているけれど、あえてそう言ってみる。

だって、メリーチェの交遊関係よくわかんないし。

取り巻きの女性徒の名前をだしても反応なさそうだし。

ここは、メリーチェよりも身分が高い人の名前をだすに限る。

「まあ!アルフレッド様が・・・?私、アルフレッド様にアリーチェと友達になっていいか聞いて参ります。」

メリーチェはそう言うと中庭から足早に去っていってしまった。

メリーチェがいなくなってホッとして私は寮に帰ることにした。




☆☆☆



「アリーチェ嬢。今、でてこれるだろうか?」

夕食も済ませて、寮の部屋でまったりとくつろいでいると、部屋の窓にコツンッと何かが当たる音がした。

最初は気のせいだろうと思っていたが、その音は数回続いた。

5回続いたところで、窓を開けて下を見るとそこにはアルフレッド様の姿があった。

もしかして、窓に石を投げてノックしていたのは、アルフレッド様?

ここ、5階なんだけどよく石が届いたなと変なところで関心してしまう。

私は、アルフレッド様に、

「すぐに参ります。」

と告げて部屋を飛び出した。

これってあれだよね。

乙女ゲームでもあったアルフレッド様からの呼び出しだよね。

確か、ゲームだとこの後、友達になって欲しいって言われるんだよね。

アルフレッドのルートに入った場合の恋人になるまでの通過点よ。

きっと、友達になって欲しいって言われるのだわ。私。

昼間、メリーチェに友達になって欲しいと言われた時はちょっと焦ってしまったけれど。

アルフレッド様ならば大歓迎だ。

「アルフレッド様。お待たせいたしました。」

私はそう言ってアルフレッド様の前に立った。

「ああ。アリーチェ。ごめんね、呼び出して。その・・・用があったんだ。」

「はい。どのようなご用でしょうか?」

この流れは乙女ゲームと全く同じだ。

これは期待できるかも。

「その・・・私と友達になってほしいんだ。」

ほら!ほら来た!!

これでアルフレッド様ルート確定だわ!!

「え、ええ。私でよければ。」

私は飛び上がりたいほど嬉しい気持ちを隠して、ドキドキしながら返事をした。
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