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しおりを挟む「マチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢。突然の息子からの婚約破棄で驚いたであろう。本来であれば内々にすべきことだが……。」
そう言って国王陛下はエスフォード王子殿下の方をチラリと見た。
「いえ……。」
「そうか。なにか、エスフォードに言いたいことはあるか?この場での発言を許そう。」
国王陛下はマチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢をなだめるように腕に抱きしめその髪を撫でる。
「恐れながら……エスフォード王子殿下にお伺いいたします。なぜ、私との婚約破棄を宣言されたのでしょうか?」
マチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢の問いかけにエスフォード王子殿下はふんっと鼻を鳴らした。
「わかりきったことを聞くのだな。まあ、いい。よく聞け。私は闇魔法の使い手のことを胡散臭く思っている。闇魔法の使い手は魔王の手先だ。魔王の手先を我が妃に迎えるわけがないだろう。もっと早く貴様と婚約破棄をすればよかったと思っている。」
声高々にエスフォード王子殿下は告げた。
貴族たちがエスフォード王子殿下の言動に対してざわつく。
「……エスフォード王子殿下。」
「まさか……。そんなっ……。魔王だなんてっ……。」
戸惑ったような声が周囲から漏れ聞こえてくる。
「……エスフォードよ。闇魔法の使い手は魔王の手先などではない。ちゃんとした人間である。私たちと同じだ。魔法の属性になんの優劣もない。」
国王陛下は硬い口調でエスフォード殿下に諭します。その間も腕の中のマチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢を気遣うようにしていました。
闇魔法の使い手はマチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢なのだから。
「属性に優劣はありますっ!光魔法の使い手こそ至上なのです。闇魔法の使い手などいりません。私が王になった暁には、闇魔法の使い手はすべて排除することをここに誓いますっ!」
エスフォード王子殿下は声高らかに宣言する。
ただ、今回は先ほどの婚約破棄宣言のように周囲から拍手はおこらなかった。変わりに貴族たちの戸惑ったような声が聞こえてくる。
エスフォード王子殿下は不思議に思いながら首を傾げた。きっと、誰もが賛成してくれるものと思っていたのだろう。
「……エスフォードよ。その考えを変えるつもりはないか?」
「ありませんっ。」
「……そうか。エスフォードよ。我が国の闇魔法の使い手はどのくらいいると思っているのだ?」
「そこにいる、マチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢と平民の二人だけではないでしょうか?他に闇魔法の使い手など聞いたことはありませんね。」
エスフォード王子殿下は私とマチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢を指さした。
どうやら私はエスフォード王子殿下に名前を覚えてもらっていないらしい。別にいいけど。
「……そうか。では、なぜこんなに周囲がざわついているかわかるか?」
「私の素晴らしい発言のためではないでしょうか。」
国王陛下の問いかけにエスフォード王子殿下は胸を張って答える。
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