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しおりを挟む「では、手っ取り早くエスフォード王子殿下に好きな相手を作ってしまうのはいかがでしょうか?」
私はマチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢に提案した。
そう、エスフォード王子殿下に好きな相手ができれば、マチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢は晴れてエスフォード王子殿下から婚約破棄をされる。そして、マチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢が国王陛下と結婚し王妃になる。この国の将来は安泰だ。
なんて良い考えなのだろうかと私は自分の導き出した答えに満足げに頷いた。
「……犠牲になる子が可哀想で私にはできませんわ。」
「うっ……。確かに。」
あのエスフォード王子殿下の婚約者になって将来結婚するとなったらと思うととても嫌です。見た目はいいのに、なぜか性格がすっごく残念だし。
乙女ゲームではマシに思えたけれど、実際に遭遇してみると嫌な面ばかりが見受けられます。
「そうでしょう?」
「……私が、変装してエスフォード王子殿下に近づく、とかいかがでしょう?マチルダ様がエスフォード王子殿下からめでたく婚約破棄されたら私は身分を明かすか、変装するのを止めます。それだったらどうでしょう?」
「……いくらエスフォード王子殿下でも、そんなに簡単にひっかかるかしら?変装しても闇魔法の使い手だということは魔力の波長を見ればすぐにわかってしまいますわ。」
「……そうでした。」
その人を取り囲む魔力の波長。それによって、どの属性の魔法が使えるのか簡単にわかってしまいます。
「それに、あなたがエスフォード王子殿下を謀ったと知られたら、すぐにでもエスフォード王子殿下があなたを害することでしょう。やめておいた方が無難ですわ。」
「でも、このままだとマチルダ様が……。」
「……そうですわね。」
マチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢は寂しそうに笑った。
どうにもならない現実を受け入れようとしているのだろうか。
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「えいっ!」
私はエスフォード王子殿下が中庭で歩いているのを見かけると、エスフォード王子殿下の前に躍り出た。
「……邪魔だ。どけっ。」
エスフォード王子殿下は私のことをキツく睨みつける。その目力は今にも私を殺しにかかってくるように思えた。
冷や汗を感じながらも私はエスフォード王子殿下の前に膝まづく。
「エスフォード王子殿下にお聞きしたいことがございますっ!」
「……。」
「うっ……。」
エスフォード王子殿下は私としゃべるのも嫌なようで私を蹴りつけるとさっさと校舎の方に歩いて行こうとする。
「エスフォード王子殿下は、なぜマチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢と婚約なさっておいでなのですか?闇魔法使いのことはお嫌いですよね?それでも、マチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢を婚約者のままとなさっているということは、エスフォード王子殿下は本当はマチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢のことをお好きなのですよね?違いますかっ!」
私のことを無視しようとするエスフォード王子殿下に向かって大きな声で問いかけた。
エスフォード王子殿下は私の発言に、先ほどよりも鋭利な視線を送ってくる。
「ぞくっ」と私の身体が震えた。
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