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「こ、国王陛下……ですか?」

 マチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢の口から飛び出た名前に驚きを隠せなかった。

「ええ。そうよ。素敵だとは思わなくって?エスフォード王子殿下との婚約を受け入れたのも国王陛下から直々にお願いされたからですわ。それでなくては、あんな馬鹿王子……あら、ごめんなさい。エスフォード王子殿下との婚約はお断りしておりましたわ。」

 マチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢はそう言ってにっこりと笑った。
 確かに国王陛下はまだ20代後半だったはずだ。国王陛下というにはかなり若い。
 それに、王妃殿下は今は不在だ。数年前に流行り病でなくなったと聞いている。王妃殿下は国王陛下よりも一回り以上年上だったと記憶している。
 
「そ、そうなんですか。」

 国王陛下は確かに後妻を迎えてもいい年齢ではある。
 むしろ、エスフォード王子殿下がいなければ後妻を迎えていただろう。だが、エスフォード王子殿下がいるため、後妻を迎えてはいなかった。
 王位継承権をめぐっての争いを避けるためだとも聞いた。だが、エスフォード王子殿下はあんなんだ。正直、これからの国の行く末が気になって仕方がない。
 いっそのこと、エスフォード王子殿下を廃嫡して、国王陛下が新しい王妃を迎えた方が良いのではないかとは思う。
 私はあの国王陛下ちょっと裏がありそうで苦手だが。

「ああ、エスフォード王子殿下から婚約を破棄してくださらないかしら。」

 マチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢はそう言って悩まし気にため息をついた。
 
「そういえば、不思議でうしょね。エスフォード王子殿下は闇魔法の使い手をとても嫌っているのに、なぜマチルダ様との婚約は受け入れたのでしょうか。」

 私は不思議に思い首を傾げました。
 
「……ほかにエスフォード王子殿下の婚約者になりたいという令嬢がいないからよ。エスフォード王子殿下も、私と婚約破棄をすれば廃嫡される可能性があると薄々感じているのではなくて?まあ、あのエスフォード王子殿下のことだから好きな相手ができれば身分が釣り合わなくても無理矢理婚約する可能性はあるけれど。」

 マチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢はそう言ってうんざりとした表情を浮かべた。
 私はマチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢の言葉に納得した。
 
「ほんと、とんだ馬鹿王子ですね。」

「……あなた、それ不敬罪になるわよ。気をつけなさい。」

 思わずエスフォード王子殿下のことを馬鹿王子呼ばわりしたらマチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢に注意をされてしまいました。確かにマチルダ・メメラーニャ侯爵令嬢の言うことは正しいです。
 いかにエスフォード王子殿下が馬鹿王子でも口に出してしまえば王族に対する不敬罪になってしまう。
 これからは発言する場は気を付けなければ。

「先ほど、マチルダ様もおっしゃっておりませんでしたか?」

「……私は言い直しましたわ。」


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