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第39話
しおりを挟む「……まあ、イーストシティ共和国につくまでにどこかで一泊しなきゃいけなかったんだから、別にいいよな。でも、マリルリから逃げている最中だったからあまり目立たない方がよかったかも。下手に知り合いなんか作ってしまったら居場所がすぐにバレてしまいそうだ。どうするか、このままとんずらしてしまおうか……。」
ヒューレッドは男性の言葉を素直に受けいれてしまったが、いざ自由になって街の中をぶらついているとだんだんと不安になってきた。
そもそもヒューレッドは観光でメンスフィールドシティに来たわけではないのだ。聖女マリルリの手から逃げるために、セレスティアの転移の魔法により、メンスフィールドシティの側まで転移してもらったのだ。
聖女マリルリからイーストシティ共和国へ逃げるための旅。
それなのに、メンスフィールドシティの住人と仲良くなって泊めてもらうのはいかがなものなのだろうか。ヒューレッドがメンスフィールドシティにいたという形跡を残してしまえば、せっかくのセレスティアの好意を踏みにじることになってしまうのではないだろうか。
ヒューレッドはなぜか途端にそんな不安に襲われたのだ。
『ええ~!あの人苦手だけど、ご飯はとぉ~っても美味しかったの~。もっと食べたいから今日は泊まるのぉ!』
「はは……。でも、マリルリが……。」
『大丈夫だよ~。まだ来ないの。だって、セレスティア様が長距離転移してくれたんだよ。2~3日は大丈夫だと思うの。』
「……そうかな?」
『そうそう。大丈夫なの!だから、今日は泊まって美味しいご飯お腹いっぱい食べるの!』
フワフワはそうとう彼女の作った離乳食が気に入ったようだ。なんとしてでも、泊まって離乳食をお腹いっぱい食べたいようだ。
「でも……そういえば、彼らの名前知らないや。」
『……?名前?それって美味しいの?』
ヒューレッドは、今になって家に泊めてくれるといった男性とその妻の名前を知らないことに気づいた。
「いや、名前も知らないのに、見ず知らずのオレを泊めるっていうのは、どうなのかと。ただでさえオレ、身分証持ってなかったし……。」
彼らの名前も知らないことにヒューレッドは気がつき、本当にこのまま彼らの家に泊まってもいいのか不安になる。それに、彼らもヒューレッドの名前は知らないはずだ。ヒューレッドは彼らに名前を言った覚えはないのだから。
『深く考えすぎなの。美味しいご飯をくれる人に悪い人はいないの~。』
不安を覚えるヒューレッドとは反対に、フワフワは脳天気に答える。
「う~ん。でもなぁ~。もしかしたらマリルリの罠かもしれないし……。」
『考えすぎだよ~。っていうか、マリルリって誰なの??」
「え゛っ!!?」
どうやらフワフワは脳天気な理由は聖女マリルリのことを知らないからのようである。知らないということはとても幸せなことである。
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