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第8話
しおりを挟む「きゃあっ!?」
マリルリは森の奥から聞こえてきた悲鳴に驚いてヒューレッドに抱きついてきた。
「マリルリ様はすぐに戻ってください。私は、悲鳴の持ち主を確認に行ってきます。」
「そんなっ。危ないわ。悲鳴なんて放っておきなさいよ。それより私をヒューレッド様のお部屋に連れて行ってくださいな。」
「いえ。そういうわけにはいきません。私は様子を見て参りますので。マリルリ様は転移の魔法をお使いになられてすぐに戻った方がよろしいかと存じます。私も様子を見てすぐに戻りますので。」
ヒューレッドはマリルリから離れる理由ができたとばかりにまくし立てる。この機会を逃してしまえば、この先ずっとマリルリにいいように使われてしまう。
「そう?すぐに帰ってくるのよ?私、ヒューレッド様のお部屋で待っておりますわ。」
「はい。先に安全な場所に戻っていてください。」
マリルリはヒューレッドの魔力の残滓を記憶したため、ヒューレッドが魔法を使えばすぐに居場所がわかって迎えに行けるからかそれ以上だだを捏ねることはなく、すぐに転移していった。
ヒューレッドはマリルリが転移したことを確認してからすぐに悲鳴があった方に向かった。このまま放っておいて逃げるという選択肢もあるが、ヒューレッドは困っている人を放ってはおけない性格だった。
ヒューレッドは急ぎ足で悲鳴の上がった方に向かう。
するとそこには、一匹の魔獣がいた。
「みゃああああああっ!!」
そして、魔獣の前には一匹の小さい白蛇がいた。どうやら魔獣は白蛇に驚いて悲鳴を上げたようだ。
「ああ。ほら、大丈夫だよ。白蛇様は神の御遣いだからなにもしてこないよ。安心して。」
ヒューレッドは魔獣と白蛇の間に割り込むと、できるだけ優しい声で魔獣をなだめる。
「ふーーーっ。ふーーーっ。」
魔獣は黒いしっぽをぶわっと膨らませながら威嚇するように牙を見せる。よほど白蛇が怖かったのだろう。だが、魔獣なのにただの白蛇を怖がるとは珍しい。
ヒューレッドは魔獣の姿を上から下まで隅々と確認した。真っ黒く艶のある毛並みはふかふかとしており、触ったらとても気持ちがよさそうだ。
人間の子供ほどの大きさがあるが、金色に光り輝くまん丸の瞳が、魔獣を幼く見せる。
「それにしても、とても綺麗な魔獣だな。」
ヒューレッドは魔獣の前に手を出すと、魔獣に自分の匂いを嗅がせた。それから、その手を魔獣の頭にそっと乗せる。魔獣はその間呼吸を荒くさせながらも大人しくヒューレッドの手を受け入れた。
ヒューレッドが魔獣の頭に乗せた手で優しく撫でると、魔獣の呼吸が徐々に穏やかなものになってくる。撫でられるのが気持ちいいのか、魔獣の目もしだいにトロンと溶けてくるようだった。
「良い子だ。もう大丈夫だから安心するといい。」
魔獣をなで続けながらヒューレッドは白蛇を確認する。白蛇はすでにどこかに逃げてしまったようだ。
白蛇がいなくなったことを気配から察知した魔獣は「ふしゅーーっ。」と大きなため息をつくとその身体を小さく縮ませた。
「可愛いな。猫の魔獣だったのか。」
魔獣は可愛らしい黒猫に姿を変えた。ヒューレッドは魔獣をひょいっと抱き上げると肩に乗せる。
黒猫の魔獣は抵抗せず大人しくヒューレッドに身体をあずけた。
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