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第5話
しおりを挟む「私だ。」
部屋の外からは重低音のある男性の声が聞こえてきた。
どうやら聖女ではなかったようだ。ヒューレッドは胸をなで下ろした。だが、どこかで聞いたような声ではあるが、ヒューレッドの数少ない友人の声ではない。「私だ。」と偉そうに言われても、ヒューレッドは誰が訊ねてきたのかわからなかった。
ヒューレッドは魔力を使ってドアの向こう側を透視する。するとそこには、
「国王陛下……。」
この国の国王であるアルジャーノンが立っていた。
ヒューレッドはすぐにドアを開けるとアルジャーノンに向かって最敬礼をした。
「よい。私はそなたに忠告に来たのだ。ヒューレッドよ、そなたが宮廷魔術師として国に仕えてくれたこと、感謝しておる。」
「恐れ多いお言葉……。」
アルジャーノンが何を考えているのかわからずヒューレッドは緊張しながら次の言葉を待つ。
「そなたに忠告する。その目立つ金髪をやめよ。一刻も早く国から出て行くのだ。そして、国内にいる間は魔法を使うでない。生き延びたければそうせよ。」
国王であるアルジャーノンは厳しい表情でそれだけ言うと、アルジャーノンは呆然とするヒューレッドを残してどこかに消えて行ってしまった。
残されたヒューレッドはアルジャーノンの言葉の意味を探るように何度も心の中で繰り返す。
国王であるアルジャーノンは王妃様や聖女と同じ側の人間なのか、それとも王妃様や聖女を止めたいと思っているが止められずに、せめて被害に遭いそうな者に忠告しているだけなのか。
ヒューレッドは思案した。アルジャーノンが敵になり得るのか否か。
だが、考えていても情報が足りなすぎて答えがでるはずもない。ただ、この国を出て行くというのは先ほどすでにヒューレッドの中で決めたことだ。
黄金に輝く髪の色についても、目立つことこの上ない。市井にまぎれるならば確かにこの髪の色では目立つというのは一理ある。だが、最後の魔法を使うなとはどういうことだろうか。それだけが、ヒューレッドには理解ができなかった。
国内で魔法を使うことで、なにがあるかというのだろうか。それに、ヒューレッドはこの部屋を出る際に転移の魔法を使おうと思っていた。転移の魔法は今いる場所から半径5㎞以内に転移できる魔法だ。ゆえに、部屋から出た際に他のものに見つからないように転移の魔法を使って外にでようと思っていたのだが、なぜかアルジャーノンから魔法を使うなと言われてしまった。
魔法を使わないとすると、自力で王宮の外へと出て行かなくてはならなくなる。かなり難易度があがることは確実だ。
「どうしたものか……。」
ヒューレッドは思案する。だが、考えている間にも無情にも時間は過ぎていく。
そうこうしている間に、部屋のドアがまたノックされた。
ビクッとヒューレッドの心臓が跳ね上がる。今度は誰が訪ねてきたというのだろうか。
「ヒューレッド様。私ですわ。マリルリですわ。」
どうやら考えている間に、聖女マリルリがヒューレッドの部屋まで押しかけてきたようだ。ヒューレッドはハッと息を吐き出した。
まさか、逃げようとしたことがバレたのではないかと焦る。額には冷たい汗が流れ落ちた。
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