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第15話
しおりを挟む「ユフィリアさん。毎日来てくださってありがとう。」
保護猫施設に訪れると迎え入れてくれたナーガ様に開口一番にそう言われた。
「いいえ。私こそ、毎日来させていただいてありがとうございます。」
「まあ。ふふっ。少しは緊張が取れたかしら?」
「えっ……。」
「コンフィチュール辺境伯はとても寡黙な方でしょう?ユフィリアさんも嫁いできたばかりで緊張されていたように見受けられたから。少しはコンフィチュール辺境伯とお話しできるようになったかしら?」
どうやらナーガ様は、ルードヴィッヒ様と私が上手くいっていないことをご存知だったようだ。まあ、ミーア様が実は王族だったということがわかったのだから、ナーガ様も最初から気にかけてくださっていたのかもしれないが。
「は、はい。」
「そう。それはよかったわ。ああ、そうだわ。ミーアちゃんに子供が産まれたと聞いたわ。ユフィリアさんは、もうミーアの子供たちに会ったかしら?」
やっぱりナーガ様もミーア様が出産なされたということはご存知だったようだ。
「いいえ。まだ、ルードヴィッヒ様に止められております。」
「そうなの。そう言えばそうよねぇ。まだ出産してから一週間ほどですものね。産まれたての赤ちゃんもとっても可愛いからユフィリアさんにも見ていただきたかったわ。私も見たかったわ。」
ナーガ様はうっとりと目を細めた。
ナーガ様はミーア様のお子様たちにまだお会いしていないらしい。
「……ナーガ様でしたら、すぐにでもお会いできるのではないでしょうか。私はまだミーア様とお会いしたことはございません。ですので、ミーア様が見ず知らずの相手だと警戒してしまうからということでまだ会っていないのです。ナーガ様でしたら、ミーア様と面識がございますでしょう?」
「実はね、ミーアちゃんはと面識はあるのだけれども、コンフィチュール辺境伯が家族として迎え入れられてからは会っていないのよ。だから、残念ながら私でもミーアちゃんに警戒されてしまうの。ミーアちゃんには安心して子育てをしてほしいからね。私はまだ会うのを我慢しなくては、ね。」
ナーガ様はそう言って残念そうにため息をついた。
私は首を傾げる。
ミーア様は王族なのに、王太后陛下とあまり親しくなかったのだろうか。もしかして確執があったのだろうか。それにしては、ナーガ様はミーア様のことを気にかけているようにも見えるけれど。
「ミーアちゃんは女の子だしね。毛並みが白いでしょう?白い毛並を持つ子は警戒心が他の子たちよりも強い傾向があるのよ。」
「……そうなんですね。」
髪の色が警戒心とどういう関係があるのかわからないけれど、ミーア様はどうやらとても警戒心の強いお方らしい。それにしても白い髪の毛ってとても珍しいわ。年を取ると髪が白くなるけれど、ミーア様はまだ若いしそれとは別なのよね。
でも、王家に髪が白いお方がいるとは聞いたことが無いわ。
もしかして他の人と違うという理由で隠されて育てられたとか?
「老婆みたいな白髪の子ね。気持ち悪いわ。」とか、言われて王家との間に確執があったのかしら。
それならミーア様が人一倍警戒心が強いのも頷けるし、ナーガ様のことも警戒してしまうのもわかる。
「でも、コンフィチュール辺境伯がミーアちゃんをとっても大事にしてくれているから安心だわ。ユフィリアさんもミーアちゃんのことを可愛がってあげてね。まあ、ユフィリアちゃんもミーアちゃんに会ったら絶対気に入ると思うわ。誰よりも気位の高い子だけど、仕草も優雅で美しいから。そんなミーアちゃんが子育てをしている姿見てみたいわね。ふふっ。」
そう言ってナーガ様は楽しそうに笑った。
そしてこの日の帰り道で私は運命の相手と出会うことになる。
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