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第7話

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「ねぇ、ライラ。ルードヴィッヒ様にお話しがあるのだけれども?」

 思い立ったが吉日。
 私は早速侍女であるライラにルードヴィッヒ様にお会いしたいと告げた。
 まあ、いつもルードヴィッヒ様からは忙しいので後にして欲しいと言われてまったく、全然、これっぽっちもお会いすることができないのだけど。
 
「……ルードヴィッヒ様に確認してまいります。」

「ええ。お願いね。」

 ライラはそう言ってルードヴィッヒ様のいらっしゃる離れに向かっていった。
 きっと今日もルードヴィッヒ様は忙しいと言って私とは会ってくれないだろう。
 会ってくれなければそれはそれで、別にいい。
 勝手に猫様をお迎えしてしまえばいいのだもの。
 愛人を離れに囲っているルードヴィッヒ様に怒られたってそのくらいは覚悟のことよ。
 
「申し訳ありませんが……。」

 ライラが申し訳なさそうに俯きながら戻ってきた。
 予想通りだわ。
 
「そう。ルードヴィッヒ様はお忙しいのね。それなら私、出かけて参りますわ。ルードヴィッヒ様の許可がなくても外出は自由ですわよね?どなたかお供をお願いできますかしら?」

 一人で出かけることは貴族としてあるまじきこと。
 本当は一人の方が気楽なのだけど、辺境伯領の治安がよくわからないので安全には配慮しなければならない。いくらルードヴィッヒ様に疎まれていようとも、私はコンフィチュール辺境伯夫人なのだ。
 
「はい。危ない場所へはお連れできませんが、旦那様から奥様の外出は自由にしてよいと伺っております。どちらに行かれるのでしょうか?」

「コンフィチュール領には保護猫施設があると聞いているわ。そこに行きたいの。」

「保護猫施設にですかっ!?」

 コンフィチュール領には王家直轄の保護猫施設があると聞いている。
 王都にも王妃様が直接管理されている保護猫施設があるが、実は各地に王家直轄の保護猫施設があるのだ。
 
「ええ。そうよ。駄目かしら?」

 ライラが驚いたように声をあげる。
 やはり猫を飼いたいというのは貴族としては好ましくないことなのかしら。
 でも、王妃様も王子妃様も猫を大事に飼っているという。
 貴族の中でもそれほど多くはないが、王妃様や王子妃様が猫を飼っているという噂を聞いて、それならば自分も……と名乗りを上げる者もいると聞く。
 ただ、貴族が猫を飼いだしたのはここ最近のことで、まだまだ貴族の中には猫を、役にもたたない獣を飼うだなんて……という意見も多い。
 私が育ったママレード伯爵家も猫を飼うだなんて汚らわしいとお父様が反対をしていた。母や私、妹は可愛らしい猫を迎え入れたかったのだけれども、お父様には逆らって飼うことなどできなかった。

「いいえ!いいえ!!奥様、是非保護猫施設に参りましょう!視察でしょうか?それとも猫を家族としてお迎えになられるのでしょうか?」

 ……ん?
 なんだかライラの反応が思っていたのと違うような気がする。
 いつもより声が弾んでいるし、表情がいつもよりとても明るい。なんだか、とても嬉しそうだ。
 眉を顰めるかと思ったんだけど。
 もしかして、コンフィチュール辺境伯邸は猫を歓迎しているのかしら?それにしては、猫を飼っている様子が全くないのだけれども。

「そ、そうね……。まずは視察かしら。気に入った猫がいたら家族としてお迎えしたいと思っているわ。ルードヴィッヒ様は猫を迎えるくらいは許してくださるわよね?」

「はい!旦那様は絶対に許してくださいます!むしろ大喜びなされるかとっ!さっそく旦那様にお伝えしてきますね。ああ、馬車の用意もしなくては!」

「えっ?えっ?」

 皮肉を込めて言ったはずなのに、ライラは大喜びでまた離れの方にかけて行ってしまった。
 「ライラ!廊下は走ってはなりませんっ!!」というユーフェの静かに怒る声が聞こえてきた。

 しばらくして、ライラはルードヴィッヒ様を連れてきた。

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