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第5話
しおりを挟む「マーマレード伯爵令嬢。お呼びだとお聞きいたしました。至らぬ点がございましたか?」
朝食を食べ終わって、テラスでボーッと庭を見つめていた私に声がかけられた。
低く落ち着いている声は昨日聞いたもの。
ルードヴィッヒ様のお声だ。
「……私はルードヴィッヒ様と結婚したと思ったのですけれど?」
私のことを伯爵令嬢と呼んだルードヴィッヒ様を軽く睨みつける。
ルードヴィッヒ様にとって私との結婚は不本意のものだったようね。きっと、ミーア様という人と結婚したかったのでしょう。
「……失礼いたしました。あなたと結婚したのは夢だと思っておりました。」
ルードヴィッヒ様は淡々と喋る。謝りながらもその口調は淡々としており、感情が見えなかった。
「そうね。夢なのかもしれないわね。」
夢を見ていると私も思いたい。
結婚によって少しは歩み寄れるのではないかと期待していたのに。
「それで、要件というのは?」
先を急かすようにルードヴィッヒ様は確認してくる。
きっとすぐにでもミーア様の元に戻りたいのでしょう。
「私の専属侍女はどなたなのでしょうか?」
「侍女の中から好きに決めていただいて構いません。当家の女主人はあなたです。侍女については好きなように決めていただいて構いません。新しく採用なされるのも構いませんが、その場合は私に一言相談していただければと思います。」
「そう。わかったわ。好きなように決めさせていただくわ。」
別に専属の侍女を置かなくても構わない。でも、毎日お世話をしてもらうのだもの。できれば、同じ侍女であった方が落ち着くというものだ。
「要件は以上ですか。それでは私はこれで失礼いたします……。」
ルードヴィッヒ様はそう言うと踵を返した。
「……お待ちください。」
「なんでしょう?」
振り返るのもおっくうだと言うようにルードヴィッヒ様はゆっくりと振り返った。
私はルードヴィッヒ様のその素振りにショックを受けながらも、気丈に振る舞う。
「ルードヴィッヒ様は離れで生活なされているのですか?」
「……ええ。」
ルードヴィッヒ様はやはり離れで生活なされているらしい。
そんなに、ミーア様という方と片時も離れて居たくないのかしら。
結婚したばかりなのだ。
せめて少しくらいは私と過ごしてくださっても良いだろうに。
だから、私はルードヴィッヒ様の様子を伺いながら次の言葉を発した。
「では、私もルードヴィッヒ様と一緒に離れで生活してもよろしいでしょうか?」
思い切って私がそう問いかけるとルードヴィッヒ様が大きく目を見開いた。
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