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第二章
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目を開けたら、そこは真っ白な空間が広がっていた。
ここは、どこだろう・・・。
ぐるっと辺りを見回すが何も無い。
どこまでも真っ白な世界が広がっている。
無機質で冷たく感じ、思わずブルッと身体が震えた。
真っ白い空間に良い思い出なんか無い。
思い出した。
私が嫌いな色は白だった。
思い出したのは、昔の記憶。
遠い遠い記憶。
私は、遠い記憶の中で立花 華と名乗っていた。
どこにでもいる普通の女子高生ではなかった。
産まれてから一度も学校になど、通ったことなど無かった。
義務教育の期間も学校には通わなかった。
私はいつも一人だった。
友達なんていなかった。
たまに会うのは、母と春兄。
めったに会わないけど、一年に一回誕生日の時だけ、父が会いに来た。
私は病弱で、家から一歩も出ることは無かった。
毎日点滴をおこない、薬も数種類飲んでいた。
何の病気なのかはわからない。
誰も教えてくれなかったから。
隔離された部屋の中では何も面白味がなかった。
そんな生活が15年続いたある日、隔離されている部屋の窓から外を見ると真っ白い小さな生き物がいた。
猫という動物を生で見たのはこの時が初めてだった。
私はすぐに春兄に連絡を取った。
一人ではこの部屋から出られないから。
「真っ白い猫がいるの。可愛い。ご飯あげなきゃ」
「そうだね。でも、華は外に出ては駄目だよ。僕が代わりにあの猫にご飯をあげておくよ」
それから、春兄は毎日、朝昼晩と白猫に餌を与えにやってきた。
窓からその様子を伺うのが私の日課になった。
「名前、付けてあげなきゃ。」
「そうだね。名前がないと不便だね。華、名前を付けてあげて?」
「う~ん。・・・凪!凪が良いわ」
「どうして?」
「あの猫を見ているととても落ち着くの。だから凪」
「そう、じゃあ今日からあの白猫は凪だね」
「うん。凪」
外に出ることはできないけど、凪を見ていると不思議と優しい気持ちになれた。
不思議と、穏やかな気持ちを維持できた。
でも穏やかで優しい日々は長くは続かなかった。
ここは、どこだろう・・・。
ぐるっと辺りを見回すが何も無い。
どこまでも真っ白な世界が広がっている。
無機質で冷たく感じ、思わずブルッと身体が震えた。
真っ白い空間に良い思い出なんか無い。
思い出した。
私が嫌いな色は白だった。
思い出したのは、昔の記憶。
遠い遠い記憶。
私は、遠い記憶の中で立花 華と名乗っていた。
どこにでもいる普通の女子高生ではなかった。
産まれてから一度も学校になど、通ったことなど無かった。
義務教育の期間も学校には通わなかった。
私はいつも一人だった。
友達なんていなかった。
たまに会うのは、母と春兄。
めったに会わないけど、一年に一回誕生日の時だけ、父が会いに来た。
私は病弱で、家から一歩も出ることは無かった。
毎日点滴をおこない、薬も数種類飲んでいた。
何の病気なのかはわからない。
誰も教えてくれなかったから。
隔離された部屋の中では何も面白味がなかった。
そんな生活が15年続いたある日、隔離されている部屋の窓から外を見ると真っ白い小さな生き物がいた。
猫という動物を生で見たのはこの時が初めてだった。
私はすぐに春兄に連絡を取った。
一人ではこの部屋から出られないから。
「真っ白い猫がいるの。可愛い。ご飯あげなきゃ」
「そうだね。でも、華は外に出ては駄目だよ。僕が代わりにあの猫にご飯をあげておくよ」
それから、春兄は毎日、朝昼晩と白猫に餌を与えにやってきた。
窓からその様子を伺うのが私の日課になった。
「名前、付けてあげなきゃ。」
「そうだね。名前がないと不便だね。華、名前を付けてあげて?」
「う~ん。・・・凪!凪が良いわ」
「どうして?」
「あの猫を見ているととても落ち着くの。だから凪」
「そう、じゃあ今日からあの白猫は凪だね」
「うん。凪」
外に出ることはできないけど、凪を見ていると不思議と優しい気持ちになれた。
不思議と、穏やかな気持ちを維持できた。
でも穏やかで優しい日々は長くは続かなかった。
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